暑さが厳しい今年の夏、残暑もまだまだ続きそう。こんな時だからこそ自然の中に身をおいて癒されたいと思いませんか。都内にあってしかも駅を降りてすぐ、という便利な場所にちゃんと豊かな自然を作り出している庭園があるんです。「あ、そういえば」という皆さんおなじみの場所かもしれません。散歩道として改めて考えてみるとその素晴らしさに気づきます。すぐにでも行けるところばかりです。さあ、どこにしましょうか。
「有栖川宮記念公園」閑雅な庭園を無料でお散歩
渋谷と六本木に近い広尾にあるのが「有栖川宮記念公園」です。ここの歴史は古く江戸時代は大名の下屋敷でしたが明治に入って有栖川宮家の御用地となりました。その後はさまざまな変遷を経て整備され、1975(昭和50)年に港区の区立公園となっています。
東京メトロ日比谷線広尾駅から歩いて3分。スーパーマーケット「ナショナル麻布」の賑わいが見えてくるあたりに公園の入口があります。目の前に現れた階段を登ってみましょう。丸太を組んだ土の階段はちょっとしたハイキング気分。登っているとこの公園が麻布の台地を生かして作られていることを実感します。ところどころで枝分かれをする道は気分次第で進みましょう。ひたすら登っていくと遊び場が開けます。ブランコや滑り台、ジャングルジムで遊ぶ子供たちの声が木立の中に聞こえてくると、ここはありふれた住宅街の公園なんだと気づきます。
残暑の今行きたいのは水辺の散歩道。水の音をたよりに下っていきましょう。やがてせせらぎが注ぐ池にたどり着き、豊かな木々が池をめぐる日本庭園が広がります。ゆっくりと深呼吸をしてください。趣きのある佇まいは普通の街の中の公園とは一線を画しています。池に浮かぶ中島を眺めながら太鼓橋を渡りましょう。石灯籠も見えてきます。のんびり池をひとまわりするころには、暑さを忘れて穏やかな気分になっていること請け合いです。
公園を出れば広尾の街。和洋のスイーツと共にお茶やコーヒーを楽しめるお店には事欠きません。散歩の余韻にひたって優雅なひと時を過ごすのも都会らしい楽しみ方です。
参考:【有栖川宮記念公園】
初詣だけではない「明治神宮」にあるお楽しみ
一歩足を踏み入れると真夏でもヒンヤリとした冷気を感じる不思議な場所が明治神宮。創建は1920(大正9)年、明治天皇と昭憲皇太后が御祭神です。都心の真ん中に広がる豊かな自然がさまざまな植物や生物のオアシスとなっているようです。夏の涼感を求めての散歩には絶好の場所といえそうです。
明治神宮へはJR山手線原宿駅から入る南参道がもっとも一般的でしょう。今回のお散歩コースは南参道の左側、本殿の南側に広がる「明治神宮御苑」です。入口は参道の奥に立つ大鳥居を入った先にある御苑北門。入苑には維持協力金として500円が必要です。門を入ったら道なりにめぐってみましょう。西側の奥には加藤清正が掘ったと伝えられる清正井(きよまさのいど)があり、ここから湧き出る水が水源となり南池(なんち)へ注ぎます。池に沿って作られた道を進んでいきましょう。手入れされた庭は足の運びも心地よく歩みも進みます。
≪うつせみの代々木の里はしづかにて 都のほかのここちこそすれ》明治天皇御製
都心とは思えないこの御苑は明治天皇が皇后の健康のために指示して作らせたお散歩の場所が始まりとのこと。水の流れに掛かかる八つ橋や菖蒲田などは陛下から皇后へのお心遣いだとか。お休みどころとして建てられた隔雲亭(かくうんてい)は、現在お茶室として使われています。
高くそびえるような木々の緑に包まれながらゆっくりと歩いていきましょう。曲がったりちょっとした起伏もあって変化にも富んでおり、限られた場所ですが見どころはいっぱいです。一休みしたくなったら、「フォレストテラス明治神宮」にカフェやレストランがあります。木々をたっぷりと使ったしつらえは木地が生かされ、神宮の杜らしい寛ぎが味わえそうです。
開苑時間は3月~10月は9時~16時30分。
参考:【明治神宮】
「殿ヶ谷戸庭園」武蔵野の地形を生かした美しさ
都心から少し離れたJR中央線国分寺駅の南口を出てすぐ左側にあるのが「殿ヶ谷戸庭園」です。高いビルに囲まれた駅前にあらわれる入口に立つと、深い緑に誘われるような気分になります。元は三菱財閥の別荘として使われていました。現在は東京都の管理となって整備され一般に開放されています。武蔵野台地の高台と傾斜の急な崖を利用して、芝生を中心とした洋風庭園と湧水を利用した和風庭園の二つがあり、場所によって全く違う表情が楽しめるのが魅力です。
残暑の散歩コースは崖下の湧水池を目指しましょう。台地に広がる芝生はいかにも暑そうです。今回はそちらには行かず少しずつ下っていきます。目指すのは「紅葉亭」です。数寄屋造りを思わせる建物はお茶会などに利用されています。ここの東屋からの光景を先ずは楽しみましょう。目の下に広がる「次郎弁天池」は湧き出る地下水を利用して作られています。配置された石や植栽にはどんな意味が? など思いを馳せたりしながら眺めるのもまた一興です。ホッと一息ついたら崖を下りて池に出ましょう。先ほど上から見た飛び石を渡れば湧水の源へ通じていきます。このまま水音を聞きながら池をひとまわり。緩急のあるこの庭園は夏には少し疲れるかもしれません。この時季は茂る樹木の中をゆっくりと歩いていきましょう。自然を美しくアレンジした庭園には癒しの力があるようです。残暑で疲れている心と身体をリフレッシュする散歩にぴったりですね。
開園時間は、9時~17時(入園は16時30分まで)
入園料は、一般が150円、65歳以上は70円、(小学生以下及び都内在住・在学の中学生は無料)
参考:【殿ヶ谷戸庭園】