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さあ、今年もいよいよ大晦日。「年越しそば」で〆といきましょう!


残り少なくなった時間の過ごし方は人それぞれさまざま。ゆったりとされている方もあれば、まだまだ今年をきれいに納めようと頑張っていらっしゃる方もおありでしょう。最後はどんな方も一年の思いをこめて「年越しそば」を味わいたいものですね。地方によってはそばではない年越しの食べ物もあることでしょう。なんといっても縁起ものです。一年頑張った自分へ、来年こそはとの決意をこめて、など互いに一年の無事を喜んで楽しく味わいましょう。


「そば」が愛されるようになったのはなぜ?

大晦日のしめくくりにそばを食べるようになったのは、江戸時代も中期以降のことだそうです。いわれは色々と聞きますが、年越しのお祝いの食事として
「そばのように細く長く生きる」
というのが一番心にしっくりくるのではないでしょうか。また、そばは切れやすいことから
「今年の厄をスッパリ切って新しい年を迎える」
という厄払いの意味もうなずけます。

そばは痩せた土地でもよく育ち、種を蒔いてから収穫までが短いため、世界各地で栽培され大切な穀物として食されてきました。日本でもお米が育ちにくい土地では率先してそばを栽培し飢えをしのぐ食料として蓄えられてきました。

昔の食べ方は単純で、そばの実を茹でたりお粥にしたりといったものでした。やがて外側の殻をむき内側の実を石臼で碾いて粉にするようになると、水を合わせて練り団子状にして煮て食べたり、また中に具を包んで饅頭にしたりと食べ方も多様になっていきました。

現在のような麺になったのが江戸時代とのことです。つなぎに小麦粉を使うことで弾力の無いそば粉も、延ばして細く切り麺として食べられるようになりました。麺さえ作っておけば、茹であがりの早いそばは、出汁をかければすぐ食べられます。そんな手軽さがうけたのでしょう。江戸の街では屋台を担いだそば売りの姿が現れるようになりました。時代劇でもお馴染みのシーンではありませんか? もちろん今でも駅ではスタンドのそばが人気です。

そばの実とそば粉

そばの実とそば粉


ご当地それぞれ、そばの作り方は風土と文化が決める!?

茹であがりを冷たい水で洗いしめたそばは、艶々と輝き本当に美しいものです。せいろやざるに盛り箸ですくい上げたら、出汁につけてスルッと口に吸い込ませる。なんとも粋ではありませんか。

そばは通常つなぎに小麦粉を使いますが、新潟の「へぎそば」は布海苔(ふのり)という海藻をつかっています。これが独特のつるりとした喉ごしを生みだし、そばにしてはシコシコとした弾力となり、なんとも美味しいそばとなっています。盛りつけも独特で「へぎ」と呼ばれる大きめのせいろに、一口ずつ丸くまとめたそばを数人前きれいに並べます。美味しさもさることながら美しさも魅力です。

なぜ海藻を? ここに新潟独特の文化がかかわっていました。新潟県十日町は絹織物で発展をとげてきた街です。絹織物に欠かせないものが「布海苔」または「布糊」。十日町の名産である絣模様は強い撚りをかけた絹糸をつかいます。強度を持たせるため「布糊」に絹糸を通して保護をするのです。海藻からつくられるこの「布海苔」が、小麦粉を栽培していなかったこの地のそばのつなぎとして使われるようになったということです。

そば粉を練って細く切っただけのシンプルな素材だからこそ、その土地の事情が反映されてご当地ならではの味わいを生み出すものなのですね。

新潟の「へぎそば」

新潟の「へぎそば」


さあ、あなたの「年越しそば」は?

「年越しそば」をいつ食べるか、これもまたそれぞれでしょう。夕食として食べる、除夜の鐘を聞きながら食べる、他にも食べるタイミングがありそうです。

《その前に一本つけよ晦日蕎麦》 鷹羽狩行

こんな句を見つけました。なるほど、お酒の好きな人には「そばだ、そば」と言う前に一献かたむけたいのが心情でしょうか。「年越しそば」はそんなゆったりした気持ちもまた大切にしたいですね。

《ふるさとの出湯に年越し蕎麦すすり》 臼田亜浪

大勢で食べているのでしょうか、それともひとりでそっと帰郷したのでしょうか、詳しくは判りませんが、なにか穏やかな年越しのようすが伝わってきて心が温まります。

《相席の独り身同士晦日蕎麦》 田口圭

ひとりで「年越しそば」を食べに蕎麦屋へ入る。行きなれている人なら、どうということない蕎麦屋ですが、さすがに今日は大晦日、ちょっと寂しさを感じます。でも入ってみれば…なにやらホッとしたような、お互い励まし合うような心の声が聞こえそう、そんな句ではありませんか。

今年のしめくくりにはこの句を選びました。

《玉の緒よ年越し蕎麦の長かれと》 内藤鳴雪

細く長く幸いのつづきますことをお祈り申しあげます。どうぞよいお年をお迎えくださいませ。

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