吹く風に冷たさが加わり、長そでの出番が増え、秋本番となりました。北海道では最低気温が1ケタの日もあり、早くもストーブをつけるところもあります。一口に秋と言っても、まだまだ残暑が厳しい秋の始まりの日もあれば、暖が恋しくなる秋の終わりの日もあります。そこで、秋の3ヵ月間ほどを初秋、仲秋、晩秋の三つに分け、それぞれを表す言葉を見てみると、秋という季節の移り変わりが見てとれます。吹く風に季節の移ろいを感じながら、今年も秋を満喫したいですね。
初秋は「涼しい」/残暑の中に涼やかな風が感じられるころ
初秋は二十四節気の立秋から白露の前日までを指し、日付でいうと、8月8日ころから9月7日ころまで。
8月はまだまだ暑く、夏本番といった感じですが、お盆を過ぎるころから湿度が下がってきて、朝晩の風にわずかに涼しさが感じられるようになります。このように、猛暑もそろそろ終わりかな、という初秋を表す言葉には「涼」が使われることがあります。
たとえば「新涼」。これは、初秋の終わりごろ、つまり8月下旬のころの涼やかさを表す季語です。まだ残暑が厳しい時期ではありますが、吹く風がどことなく秋めいてくる、そんな時期ですね。
七十二候で見ると、8月のお盆の前あたりが、立秋の初候である「涼風至(すずかぜいたる)」。 お盆の準備を始めながら、朝晩に吹く風に、ふと涼を感じることもある、という時期です。
「涼しい」は、「冷たい」や「寒い」と違って、暑さを和らげてくれるというプラスの意味合い。長かった夏もそろそろ終わりかな、と感じるころが「初秋」です。
仲秋は「冷たい」/ふと感じられる秋のひんやりとした風
仲秋は二十四節気の白露から寒露の前日までを指し、日付でいうと、9月8日ころから10月7日ころまで。
9月も中旬を過ぎると残暑も終わり、長そでの出番となります。朝晩の風も、涼しくて心地よい、というより、冷たいと感じることも多くなり、思わずジャケットのボタンを上までキッチリと留める日も。このように、爽やかで涼しい風よりも、さらに冷たさを感じる風が吹く仲秋を表す言葉には「冷」が使われることがあります。
たとえば「秋冷」。秋になって感じる冷ややかさ、冷たい空気を表し、時候のあいさつで「秋冷の折」などとしてよく使われます。
季語には「冷やか(ひややか)」があります。この「冷やか」は、「冷たい!!」でもなく「寒い!!」でもなく、ひんやりとした秋の澄んだ空気感を表していますね。
そのほかに、「雨冷(あまびえ)」という言葉もあります。疫病退散の妖怪「アマビエ」と同じ読み方ですが、雨が降ったことにより冷気を覚えることをいいます。この時期の雨は、一雨ごとに寒くなるといわれていますが、北海道では高い山の頂が雪で覆われることもあります。
晩秋は「寒い」/とはいえ、冬の本格的な寒さとは違う、うすら寒さ
晩秋は二十四節気の寒露から立冬の前日までを指し、日付でいうと、10月8日ころから11月6日ころまで。
このころになると朝晩がぐんと冷え込み、冷たい風に肌寒さを感じます。各地で紅葉が見ごろとなり、標高の高い山の頂が雪で覆われるようになります。気温が低い日は暖が恋しくなり、北海道に初雪の便りが聞こえるのもこのころです。
このような晩秋には「寒」がつく言葉が使われることが多々あります。しかし、冬の凍てつくような寒さではなく、秋の終わりのちょっとした寒さとして「寒」が用いられます。
たとえば「やや寒」「秋寒」という季語。秋になってようやく寒さを感じるときに使われます。また、「そぞろ寒」という季語もあります。そぞろというのは、「何となく」という意味なので、何となく感じる寒さを表します。「うそ寒」なんていう言葉もあります。うそみたいに寒い、という意味ではなく、「うすら寒い」という意味合いです。「露寒」は、 露が降りる日が多くなってくる秋の終わりごろの寒さのこと。このように、冬も間近な晩秋には、「寒」を用いた言葉がよく使われます。
参考
国立国会図書館:二十四節気
今は晩秋。まだ暑い日もあったり、かと思えば、ぐんと冷え込む日もあったりで、何を着たらいいのかわからなくなってしまうことも。筆者が住む北海道では、昼間は暖かくても、朝方には雪虫が飛びはじめています。日が沈むのが早くなり、季節は確実に冬へと進んでいますが、これからは秋の紅葉シーズンが本番を迎えます。秋という季節をもう少し堪能していたいですね。