自然を感じられるのが登山の魅力ですが、自然というのは心地いいものばかりではなく、さまざまなリスクも潜んでいます。その中でも夏に気をつけたいのが「虫」の存在で、防虫対策をしっかり行っていないと、思わぬトラブルを引き起こしてしまう可能性があります。
ここでは登山中に危険な虫の被害に遭わないようにするためのコツと、スズメバチやヤマビルの対処方法の基本について、詳しく解説していきます。知識があるだけでも、冷静に対処できるようになるので、きちんと頭に入れておきましょう。
夏山であってもできるだけ肌を見せないのが基本
日本の山にはハチやヒル、マダニなどのさまざまな虫がいて、毎年のように多くの人が被害にあっています。そのような被害にあわないようにするための基本が、肌の露出が少ない服装で山を登るということ。
夏山は涼しいとはいえ、それなりに汗をかいてしまうので、つい短パンとTシャツといった軽装を選びたくなりますが、肌の露出面積が大きいほど虫の被害にあう確率は高くなります。このため、虫がいる可能性が高い山では長袖長ズボンが基本です。
最近は半袖半ズボンに登山タイツを組み合わせる人もいますが、夏用の登山タイツは生地が薄いので、虫によっては針が通過して刺されてしまうこともあります。もちろん肌を直接露出するよりも被害にはあいにくいものの、それなりのリスクはあります。
さらに、長袖長ズボンに虫よけ剤を組み合わせることで、より安全に登山を楽しめるようになります。それでも被害にあうこともあるので、虫刺され薬も用意しておきましょう。
スズメバチは「静かに離れる」が基本
登山中のトラブルでとても多いのが、スズメバチによる被害です。スズメバチは攻撃的なハチで、巣の近くを通過するだけで刺されてしまうことがあります。いきなり攻撃をしかけてくるのではなく、まずは威嚇してくるので、この段階ですみやかに引き返すのが基本です。
せっかくの登山なのに引き返すの?と思うかもしれませんが、登山の基本はリスク回避です。無理に通過してスズメバチに刺されたのでは、楽しむどころではなくなってしまいます。
また、スズメバチが近づいてきても手で追い払うなどせず、とにかく大人しくして去っていくのを待ちましょう。刺されてしまう可能性はありますが、スズメバチの集団に襲われるということは回避できます。
・黒色の服装は避ける
・整髪剤や制汗剤は無香料を選ぶ
肌の露出を避けつつ、この2点もしっかりと頭に入れておいてください。スズメバチが活動するとされる春から秋にかけては、黒などの濃い色の服装は避けて、さらに香料など匂いがするものの使用は避けるのが基本。
もし刺されてしまったら、ボイズンリムーバで吸い出して、水で洗い流す必要があります。ボイズンリムーバを持っていない場合には、周りに持っている人がいないか聞いて、応急処置に協力してもらいましょう。また全身症状が起きているようなら、すみやかに救急車を要請してください。
【参考】
スズメバチにご注意ください|鳥取県
ヤマビルはあわてず落ち着いて対処すればOK
ヤマビルは見た目がグロテスクで、なおかつ咬まれると血だらけになってしまうのもあり、ヤマビルが発生しやすい山に行くのも嫌だという人もいますよね。確かに下記のような特徴があり厄介な存在ではありますが、それほど恐れる必要はありません。
・出血が止まりにくい
・引き剥がしにくい
出血が止まりにくいのは、ヤマビルが血液を固まらせない物質(ヒルジン)を出すためですが、きちんと傷口を押さえておけば、いずれ出血は止まります。また体が伸びるので引き剥がしにくいものの、専用スプレーやライターなどで簡単に剥がせます。
ただ気持ち悪いのは事実ですので、咬まれないように対処するのが理想です。ヤマビルが付きやすいのは休憩中です。歩行中も注意が必要ですが、立ち止まっているときのリスクのほうが高く、休んでいるスキにズボンの裾から侵入したり、ザックに取り付いたりしてきます。
・ザックを地面に置かない
・湿っている場所には直接座らない
・休憩後はヒルが付いていないかチェックする
これだけで、ヤマビルの被害を最小限に抑えられます。とはいえ、注意していても咬まれてしまうことはあります。そのときは慌てずに対処しましょう。まずはライターやスプレーで取り除くこと。もしそれらがない場合には、口元をつまんで除去しましょう。ヤマビルは無理に取り除いても歯が皮膚に残ることはありませんので、指で引き剥がしても問題ありません。
その後、ヒルジンを水で洗い流して絆創膏などを貼っておけば、普通の傷と同じように血が止まります。引き剥がしたヤマビルは、そのままにしておくと繁殖したり、他の人が被害に遭ったりしますので、できるだけ駆除しておいてください。
痒みがあっても、抗ヒスタミン剤を塗っておくだけでOK。スズメバチのように命の危険があるわけではないので、落ち着いて対処すれば問題ありません。ただ、咬まれないのが1番ですので、とにかく、こまめに足元をチェックしておきましょう。
ちなみにマダニに咬まれた場合には、自分で取り除くのはNGです。そのままの状態で病院(皮膚科・外科)に行って、お医者さんに取り除いてもらいましょう。