小学校の社会科の授業で誰しもが習ったはずの地図記号。現在は地図アプリなどが普及しているため地図帳を開く機会が減り、地図記号を目にすることは少なくなりましたよね。最近はクイズ番組などで地図記号を問う問題が出てきたりしますが、大人になった今、どの記号が何を表しているのか思い出せないことがあります。今回は記号の形からだけでは想像しづらい地図記号を集めてみました。
畑
まずは畑の地図記号から。この記号が畑を表していることは一般常識的にみなさん知っているかもしれませんが、その成り立ちを知らない人は多いのではないでしょうか。実はこれ、地面に種を撒いてから初めて顔を出す「二葉(ふたば)」の形を模しているんですって。確かに言われてみれば、二葉をデフォルメした形に見えますよね。
消防署
アルファベットの「Y」の形に似ているのは消防署を表す地図記号です。もちろんこれは「Y」ではなく以前使われていた火消道具の「さすまた」を表しているのだそう。江戸時代の頃は現代のような放水ポンプや消火設備などがなく、火事が起こるとさすまたで家の柱を折り、家を潰して鎮火をしていました。
「火事と喧嘩は江戸の花」という言葉にもあるように、木造建築が密集していた当時の江戸はしょっちゅう火事が起こっていました。だから庶民の家は簡単に建てたり壊したりできる造りになっていたようです。出火するごとに壊しては作り、また壊しては作るの繰り返し。当時はそれがとても合理的だったようです。
交番
消防署のYに対して交番の地図記号は「X」に似た形をしています。これは警察官が所持している警棒を交差させた形を模しているとされています。
ちなみに警察官が町に駐在する「交番」というシステムは日本が発祥で、アメリカなど一部の国々では「KOBAN」のまま意味が通用するとされています。なので外国人観光客が増えた今日の日本でも交番には「POLICE」ではなく「KOBAN」と書かれています。
気象台
お次は「T」に似た形の地図記号「気象台」。こちらは風を測定する風速計を横から見た形を模しています。なお、全ての都道府県の中で気象台の数が最も多いのが北海道。札幌管区気象台を含めると7カ所もありダントツで1位です。
裁判所
木のようにも見えるこちらの地図記号は裁判所を表しています。これは、昔の裁判所がこのような形の立て札を使って裁判内容を周知していたことが由来となっています。木の形に似ていることから「森」や「林」と間違って覚えてしまった人も多いのではないでしょうか。
官公署
官公署とは国が決めている役所のことです。なんとなく人が驚いたときのような顔にも見えますが、漢字の「公」の昔の字を模したものなんだそう。言われてみれば…な感も否めませんが、イマジネーションを働かせて「公」の字を連想しながら覚えてみてください。
工場
子供にとってはどうあがいても太陽にしか見えない地図記号「工場」。機械を動かすために必要な歯車の形からこのデザインになっているのですが、「なんで太陽のマークが工場なの?」と困惑した少年少女も多いはず。幼心に植え付けられたインパクトが強いので、認知度が高い地図記号かもしれません。
灯台
船舶の航行目標として重要な役割を果たしている灯台の地図記号です。上で紹介した工場のマークの中に黒い点が描き足されたように見えるため「工場→灯台」が結びつかずとても覚えづらいです。実際は灯台を真上から見た形を模しているそうで、真ん中の黒い点とまわりの突き出た線は灯台が四方八方に光を放っている様子を表しているのだとか。
高塔(こうとう)
五重塔や展望台のほか、鉄塔、給水塔、火の見櫓など他の建物よりもかなり高い建造物を表す「高塔」。実はこれ、東京タワーを真上から見たときの形を模しています。四方にちょこっとはみ出ているのは東京タワーを支える橋脚部分を表現しているんですって!
話は変わりますが、地図記号の中には「電波塔」を表すマークもあります。東京タワーは電波塔としての機能を持っているので、地図上でも「電波塔」の記号を使用していると思われがちですが、高塔の記号が使われています。これは、東京タワーが観光目的も兼ねた塔であるからという理由なんだそう。
おまけ
地図記号の中には新しく仲間に加わったものもいくつかあります。もっとも新しい地図記号が「自然災害伝承碑」で令和元年に登録されました。そのほか、平成18年に登録された老人ホームなどは一般公募から選ばれたデザインが基になっており、一目で分かりやすいものになっています。