2021年も残すところあと1ヵ月。気象の世界でも、色々なことがありました。
この1年で気象業界を賑わせた言葉や、新たに登場した言葉を選出する「お天気トレンド大賞2021」を発表します!日本気象協会所属の気象予報士123人による協力のもと、上位5位までを選出しました。
気になるランキングは?
tenki.jpでは、「お天気総決算」として毎年「今年の天気を表す漢字」と「お天気10大ニュース」を発表していますが、今年から新たに、気象業界を賑わせた言葉や新たに登場した言葉を選ぶ「お天気トレンド大賞」を発表します!
日本気象協会に所属する気象予報士123名にアンケートした結果、1位に選ばれたのは「ノーベル物理学賞」でした。
TOP5や選んだ気象予報士のコメントなどを詳しく見ていきましょう。
1位 ノーベル物理学賞
2021年のノーベル物理学賞に、アメリカ・プリンストン大学の上級研究員である真鍋淑郎さんが、ドイツとイタリアの研究者とともに選ばれました。
ノーベル物理学賞が、気象や気候の研究分野を対象とするのは初めてかつ異例のことで、気象業界を大変賑わせました。
真鍋さんは、「大気中の二酸化炭素の濃度が上がることが地表の温度上昇につながること」を世界に先駆けて明らかにするなど、地球の複雑な気候システムを調べるために必要な、気候モデルの基礎を築き上げました。
その気候モデルは現在の温暖化予測の礎となっています。
【関連記事】2021年のノーベル物理学賞 気象分野での受賞(「ラニーニャ現象発生へ 関東などに雪をもたらす南岸低気圧の影響は? 3か月予報」より 2021年10月25日)
●選考した気象予報士のコメント
「真鍋淑郞先生が進めた研究が、現在の気候変動予測、日々の気象予測いずれの原点となっています。」
「気象分野(厳密にいえば気候分野かもしれませんが)でノーベル物理学賞を受賞するというのは異例なことであり、印象的でした。」
「(真鍋さんの研究があった)おかげでこの仕事に就けました。」
2位 おかえりモネ
2021年5~10月に放送されたNHK朝の連続テレビ小説「おかえりモネ」では、ヒロインが気象予報士として成長していく姿が描かれ話題になりました。
「おかえりモネ」の影響か、放送期間中に行われた気象予報士試験では、2013年8月以来8年ぶりに受験申請者が4000人を超えました。
tenki.jpでも、「おかえりモネ」の気象考証を担当した、気象予報士の斉田季実治さんにインタビューをさせていただきました!
また、本作品で頻繁に取り上げられた「彩雲」や、番組のエンディングで放送される「観天望気」も注目を集めました。
【関連記事】「おかえりモネ」の舞台裏 気象考証の斉田季実治さんインタビュー「天気や防災に興味を持つきっかけに」(2021年06月23日)
●選考した気象予報士のコメント
「朝ドラで、気象予報士を扱うということが驚きで、うれしかったです。」
「気象予報士試験の申請者が増えたと言われるほど、話題になりました。」
「気象予報士や気象のことが、これだけ詳しく描かれたドラマなどはこれまであまりなかったと思います。」
3位 線状降水帯情報
次々と発生した積乱雲が数時間にわたってほぼ同じ場所を通過・停滞し、非常に激しい雨が長い時間降り続く「線状降水帯」。
その「線状降水帯」による災害発生のおそれをいち早く伝えるための情報として、気象庁は、レーダーなどによって「線状降水帯」と考えられる雨域が確認された際に、土砂災害や洪水の危険性が急激に高まったことを知らせる「顕著な大雨に関する情報」の運用を、2021年6月17日から開始しました。
この情報に「線状降水帯」の自動検出技術は、日本気象協会、国立研究開発法人防災科学技術研究所、気象庁気象研究所が開発したものです。
今後、「線状降水帯」の予測にも貢献できるよう、更なる検出技術の向上に向けて研究を進めています。
【関連記事】「顕著な大雨に関する情報」の提供が始まる 「線状降水帯」発生時は災害発生のおそれ(2021年06月17日)
●「線状降水帯情報(顕著な大雨に関する情報)」開発メンバーのコメント
「線状降水帯の発生時刻や位置、降水量を正確に予測することは、最新の気象予測技術をもってしても困難です。
内閣府戦略的イノベーション創造プログラム第2期の研究プロジェクトを通して、気象庁に実装された『顕著な大雨に関する情報』は、予測の難しい線状降水帯を、まずはきちんと定義し、その発生を検出することが重要であるとの思いから開発に取り組んだものです。そして現在は、避難判断に重要な半日先の予測について精度向上に取り組んでいます。
『顕著な大雨に関する情報』が発表された際には、すでに災害が身近に迫っている状況である可能性が高いため、自分が住んでいる場所の特性や最新の降雨状況に応じて、避難するか、自宅の2階以上へ留まるかなど、避難行動を判断してください。」
(日本気象協会 技術戦略室長 増田有俊)
●選考した気象予報士のコメント
「線状降水帯情報の開始で、線状降水帯という言葉がより一層普及してきたように感じました。」
「命を守るために有益な情報の発信が新たに開始されたことは、広く社会の注目を集めたと思います。」
「日本気象協会の技術も役立っている情報です。」
4位 キキクル
気象庁は、大雨による災害発生の危険度の高まりを地図上で確認できる「危険度分布」の愛称を「キキクル」に決定しました。
2020年9~10月に愛称を一般募集。2021年3月17日に、「危機が来る」が由来の「キキクル」という愛称が発表されました。
「キキクル」とは、大雨による災害の危険度を5段階で色分けして地図上にリアルタイム表示する情報で、気象庁のHPやテレビの気象情報コーナーなどからも確認することができます。
活用することにより災害から自分自身や大切な人の命を守ることができる情報です。ぜひこの機会に、大雨警報や洪水警報が発令されたらキキクルで危険度を確認する習慣をつけましょう。
【関連記事】「キキクル」で災害発生の危険度をチェック!自主避難の判断に活用しよう(2021年04月04日)
●選考した気象予報士のコメント
「各放送局でよく活用されていた。「危険度分布」ではなく愛称を「キキクル」としたことで、覚えやすく、認知が広がったのではないかと感じています。」
「愛称の決定から運用にかけて、テレビ等を中心に目にする機会も増え、危険度分布がより身近なものとして広まりつつあるように感じました。」
5位 海底火山噴火
小笠原諸島の海底火山、福徳岡ノ場で2021年8月13日に規模の大きな噴火が起こりました。噴煙が約16~19kmに達し、明治以降の日本列島の火山噴火としては過去最大規模でした。
この噴火による大量の噴出物によって、2つの新しい島も誕生しました。(ただし東側の島はその後、海没。)
この噴火はその規模もさることながら、「軽石」(※)の存在が注目を集めました。
噴火から2ヶ月ほどたった10月以降、沖縄県や鹿児島県の奄美地方などに、噴火に伴って出た大量の軽石が漂着。船の航行にも支障が出ています。
(※軽石:マグマが急激に冷えて固まったもの)
●選考した気象予報士のコメント
「衛星写真からも捉えられ、沖縄等で噴出物の軽石が漂着したことが記憶に新しいです。」
「噴火した当初、ここまで影響すると思っていた人はほとんどいなかったと思います。今後は沖縄だけでなく、全国に影響を及ぼす可能性もあるため注意が必要です。」
2021年お天気トレンド大賞 まとめ
特に1、2位に選ばれた言葉は、テレビやSNSなどでも話題となり、天気や気象に関する事柄が、その垣根を超えて多くの方に注目されたことが伺えます。
また3、4位の言葉には、新たな防災情報に関する言葉がランクインする結果となりました。
天気に関する言葉の中には、複雑なものやあまり聞きなれない言葉もありますが、今回選出された言葉の中で皆さんの印象に残っていた言葉はありましたか?
天気に関する言葉を通じて、より多くの方に天気をもっと身近に感じていただければ幸いです。
----<調査概要>
調査対象:日本気象協会所属の気象予報士123名
調査期間:2021年11月1日(月)~11月7日(日)