本格的な夏まではもう少し時間がかかりそうですが、そろそろエアコンをつけたくなるような日が増えてきましたね。そんな夏場に人気なのが接触冷感の敷きパッド。夏場の睡眠の質を高めるために必須アイテムという人もいるかと思います。
でもインターネットなどで調べると「全然冷えない」というような声もあり、購入するかどうかで迷っている人もいるかと思います。そこで今回は接触冷感の仕組みについて解説し、どのような点に気をつけて寝具を選べばいいのかについて、分かりやすくご紹介していきます。
接触冷感素材は熱を移動させて肌に冷たさを感じさせる
夏の暑い日に建物の陰になっているコンクリートや鉄などを触って、手がひんやりとしたことがあると思いますが、このときのひんやりとした感覚を接触冷感と呼びます。
ひんやりとするのは、手の熱がコンクリートや鉄に移り、手の表面温度が下がるためです。熱は高いところから低いところへ移動する性質があり、熱の移動速度が速いほど、私たちはより冷たさを感じることになります。
そのような性質を、衣類や寝具に応用するために作られたのが接触冷感素材です。接触冷感素材の布地は、一般的な布地と比べて次のような特長があります。
・熱伝導率が高い
・吸水性と放湿性に優れている
・肌触りがサラサラしている
熱伝導率というのは熱の伝わりやすさだと考えてください。熱伝導率が大きいほど皮膚の熱が素材に伝わりやすく、より涼しさや冷たさを感じることができます。
また汗によるベタつきや湿度が不快感を与えるので、接触冷感素材は吸水性と放湿性を重視して開発されています。さらに触れたときに肌離れしやすいほうが快適に感じるので、接触冷感素材では肌触りのサラサラ感を持たせています。
【参考】
接触冷感|日本化学繊維協会
エアコンのように冷却し続けるわけではない
接触冷感の敷きパッドを「就寝中にずっと体を冷やしてくれるもの」だと思っている人もいるかもしれませんが、残念ながらそのようなことはありません。確かに接触冷感の敷きパッドは体温を奪ってくれますが、同時に体温によって温められていきます。
ずっと触れ続けると接触冷感素材は体温に近くなり、熱の移動が止まってしまって、冷たさを感じなくなるようです。衣類の場合には、肌に触れる箇所が常に変わりますし、風によって衣類が冷やされるので冷たさが持続しますが、寝具の場合は冷たさが持続しません。
このため接触冷感の寝具を使うときには、エアコンも併用する必要があります。エアコンは使いたくないというのであれば、扇風機で風を当てて、寝具に熱がこもらないように工夫が必要です。
接触冷感なのに「全然冷えない」と思っていた人も、この説明でなぜ冷えないのかわかってもらえたかと思います。そもそも私たち人間が発熱体であり、どんなに優れた接触冷感素材でも、寝ている間の発熱をすべて吸収しつつ冷たさを維持するのは、現時点のテクノロジーでは困難です。
接触冷感の寝具で快適さを維持したいなら、何らかの方法で寝具から熱を取り除く必要があるということを頭に入れておきましょう。
接触冷感アイテムを選ぶときの基準
夏場に向けて様々な接触冷感アイテムが発売されていますが、すべてのアイテムが同じように冷たさを感じるわけではなく、アイテムごとに冷たさの度合いが違います。このため、接触冷感アイテムを購入するときには「接触冷湿感評価値:Q‒max」を参考にしてください。
Q‒maxは触れたときの熱の移動量を示したもので、数値が大きいほど多くの熱が移動します。一般的にQ‒maxが0.2以上ある場合に接触冷感素材と呼びますが、0.2程度では冷たさを感じないこともあるくらい、薄っすらとした効果しかありません。
明確に冷たさを感じたければ、Q‒maxが0.4以上のアイテムを選びましょう。0.4というのは身近なものだと麻がそれに該当します。麻の寝具や衣類は肌触りがよく、ひんやりとしていますよね。購入しようとしたアイテムのQ‒maxが0.4だったなら、麻と同等だと考えてください。
ちなみに寝具を選ぶときにはQ‒maxだけで選ぶのではなく、汗による蒸れの対策ができているものを選びましょう。いくらQ‒maxが高くても汗でベタつくような寝具では快適に眠ることはできません。またQ‒maxが高すぎるアイテムを選ぶと、反対に冷えすぎる問題もあります。
「冷たい」「暑い」という感覚は人それぞれ違い、Q‒maxでも快適に感じるかどうかは個人差があります。暑がりであればQ‒maxが0.5以上の寝具を選び、暑さよりも冷えすぎるのが嫌だという場合には0.4程度の寝具を選ぶなど、自分に合った冷たさの寝具をご購入ください。
【参考】
麻が涼しいのはなぜ?|トスコ