毎年カレンダーが新しくなると気になるのが5月の連休。今年はどのくらい長く休めるかしら?とチェックする方、多いですよね。その始まりが4月29日「昭和の日」。平成の前の昭和の時代は「天皇誕生日」というお祝いの日でした。令和となった今から見ると遠くなってしまった昭和ですが、現在の日本を築きあげる土台となった重要な時代でした。昭和の連休は新緑に吹く風が爽やかな今ごろ天皇陛下のお誕生日をお祝いして始まりました。一年の内で最も心地よく過ごせる貴重な季節、昭和天皇とその時代をこの機会に振り返ってみたいと思います。
昭和ってどんな時代?昭和天皇はどんな方?イメージは年代によってさまざまでしょう
昭和は大正天皇の崩御である1926年12月25日をもって始まり、昭和天皇が1989年1月7日に崩御され終わりました。昭和元年と昭和64年はそれぞれ1週間ほど、と大変短いことが貴重な生まれ年として注目されたりもしますね。
昭和天皇が生まれたのは1901年4月29日、20世紀の始まりと重なります。即位されて昭和になると戦争が続きました。1931年に満州事変、36年に二・二六事件、翌37年から日中戦争が始まりました。1941年12月には太平洋戦争が開戦、厳しい戦いと本土空襲の激化により敗戦が現実となったとき、日本の上層部は降伏受諾派と死を覚悟した本土決戦派に二分したとのことです。昭和天皇は平和を第一に考えられ終戦を国民に伝えました。これがよく映画やドラマで聞くラジオの玉音放送です。
戦後、天皇は神格を否定した人間宣言を行って象徴となり、昭和は新しい時代へと入っていきました。平成へ至る40数年は、すべてを失った日本が急速に経済発展を遂げると同時に、国際社会においては信頼を得て活躍する国となってく過程となりました。その時代に生まれ育ち、社会に出て働いた私にとっては大変誇らしい思いがいたしました。
昭和を考えるとき豊かな発展と同時に、大きな転換点となった戦争を外すことはできません。平成となり20世紀から21世紀へ、日々に起こるさまざまな問題を抱える社会ですが、戦争が無いということがどれだけ大切かということを改めて感じます。
60年を越える長い時代だった昭和を記念する「昭和の日」は「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」として2007年に制定されました。時間とともに遠くなっていく昭和ですが、現在の日本のあり方を決めた大切な時代として記憶にとどめておきたいと思います。
戦後の昭和の象徴は何?家電がわんさか!アレもコレも昭和に生まれた!
「もはや戦後ではない」このことばは昭和31年(1956)に経済企画庁が発行した経済白書の結びとして流行語となり、戦後のめざましい復興を表しています。高度経済成長期の始まりです。「白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫」は「三種の神器」と呼ばれ、復興していく豊かさを家庭生活の中で実感する象徴となりました。テレビに「白黒」とついているのがその時代を物語っています。
テレビが広く一般家庭に普及するきっかけとなったのは昭和39年(1964)の東京オリンピック開催です。宝物のように家庭の中心に据えられ皆でテレビ画面に注目しました。洗濯機、冷蔵庫は家庭を切り盛りする主婦の生活を大きく変えていったのです。
昭和40年(1965)代に入ると「三種の神器」に代わる「3C」として「カラーテレビ、クーラー、自動車(カー)」が登場します。高速道路が建設され道路が整備されていき、どこでも自由に出かけられる楽しさを味わえる車を多くの人が持つようになったのです。何も無かった時代から次々と登場してくる便利で魅力あふれる製品を買いそろえていくことが、当時は生活の向上だと考えられていたのですね。
忘れてならないのは経済成長と科学技術の発展を大きく支えたコンピュータとネットワークの登場と普及です。最も身近なものは昭和50(1975)年代に普及した銀行のATM(CD・キャッシュデュスペンサー)でしょう。カード1枚で現金が引き出せる便利さは、あっという間にあたりまえになっていきました。コンピュータを個人でもつようになれるのは昭和も終わりの頃、昭和60(1985)年前後です。さらに、誰もがインターネットを使って自由に情報をやり取りできるようになるのは平成の時代となります。
豊かさの謳歌の裏には歪みもありました。公害に代表される環境破壊です。成長と発展は同時に私たちが生きる地球環境を守ることの大切さを教えてくれました。それは昭和から平成、令和の今でも人間が生きていく限り大きな課題です。過去から学び将来に生かすといわれるように、私たちも昭和からの学びをプラスもマイナスも併せて未来に生かしていきたいですね。
楽しくって愉快な昭和のことも話したい!
「昭和のにおい」がいっぱいで楽しく幸せな気持ちになれるものとして思いつくのは、「サザエさん」と「寅さん」です。
「サザエさん」は毎週日曜日に放送されて50年。テレビ放送の開始は昭和44(1969)年からです。長い人気を保っているのは、サザエさん一家のほのぼのとした生活ぶりではありませんか? 一家揃ってちゃぶ台で正座しての和やかな食事風景や、ご近所となにげなく交わされる温かい人情。これが懐かしい「昭和のにおい」となるのでしょう。
そんな「昭和のにおい」を描いた映画といえば、ご存じ「男はつらいよ」が思い浮かびます。渥美清さん演じるフーテンの寅、寅さんが現実に家族にいたら大変なことになってしまうと思いますが、どんな人も優しく受け入れ励ましてくれる寅さんと、寅を取りまく人々のなんともおおらかで正直なことか。
この作品でも同様に、注目は団子屋の店の奥、茶の間でくり広げられる激しい言い合いのシーンです。優しさゆえに大事に思っているがゆえに、行き違ってしまうことばの応酬に、ハラハラしながらも大いに笑い涙してしまうことがたびたびありました。
サザエさんも寅さんも気軽に人に声をかけ、それでいて押しつけがましくなく、互いを思いやる心を素直にやり取りしているように見えます。そんな人間関係の温かな優しさに懐かしさとあこがれを覚えるのではないでしょうか。
考えてみると現代はプライバシーを尊重するという立場から、相手になるべく立ち入らないという姿勢がつよくなり、かえって寂しさを感じることが多くなっているのかもしれません。
新型コロナウイルスで人との距離をとらなければならない今の状況ではありますが、疎遠になってしまった人に電話やメールで思いきって声をかけてみてはいかがでしょうか? 時代の流れに沿って守らなければならないプライバシーも尊重しながら、みんながささやかな優しさで支え合っていけたら、こんな日々ですが、きっと幸せを感じていけると思うのです。
「昭和の日」から始まる連休、「ステイホーム」で穏やかに楽しく過ごしてみませんか。