立春を過ぎ、陽射しに明るさが増したように感じます。
2月10日は「蕗の薹(ふきのとう)の日」。宮城県古川市(現在は合併により大崎市)の「ふるさとプラザ」が、1993年に制定した記念日です。日付は「ふ(2)きのとう(10)」と読む語呂合わせですが、季節感にもぴったり合っていますね。今回は、蕗の薹をはじめとした春の野草と、季節の食べ方についてご紹介します。
春を一番に告げる、日本古来の野草
蕗は日本原産のキク科フキ属の多年草。雪解けを待たずに地中から若芽が吹き出ることから、「冬吹き草」といわれていました。古くは「ふふき」と呼ばれており、それが短縮されて「ふき」となりました。
立春を過ぎるころから顔を出す蕗の若芽が「蕗の薹」です。その柔らかな黄緑色は春の息吹を感じさせてくれますね。季語では「春の蕗」とも表記され、夏の季語である「蕗」と区別されています。
ほとばしる水のほとりの蕗の薹 野村泊月
ほろ苦さと清涼感ある風味を味わう
「春の皿には苦味を盛れ」という言葉を耳にしますが、蕗の薹をはじめ、よもぎ、せり、つくしなど、春の野草の苦み成分には、新陳代謝をうながす作用があるといわれています。芽吹いたばかりのつぼみをいただく蕗の薹は、春の味覚としてぜひ食卓にとり入れたいですね。
野草はアクが強いので、軽くゆでる、水にさらすなどのアク抜きをしてから食べるのがコツ。薬味や香りづけとして活用するのも、料理のアクセントになり、野草ならではの風味を楽しめます。
春の常備菜に、手軽に作れる「蕗味噌」はいかがでしょうか。蕗の薹を刻んでから、好みの味噌で炒め合わせます。みりんなどを加えて甘めにしたり、ゴマやかつお節を加えてアレンジしても。そのままご飯のお供に、肉料理や魚料理のソースに、茹で野菜に合えたりと、いつもの料理にさっと加えて春の息吹を味わいましょう。
季節に合わせた調理法と味付けで健やかに
春は苦味、夏は酸味、秋は辛みのあるもの、冬は油をつかったコクのある味を意識すると、からだにうれしい料理になります。春先は、主食にたけのこご飯やよもぎの草もち、汁物には蕗の薹を刻んだみそ汁、といった献立で苦味を取り入れてみませんか。
また、同じ食材でも季節に合った調理法で食べるのもおすすめです。ごぼうなら春はさっと炒めたきんぴら、夏はたたきごぼうの梅煮、秋はけんちん汁の具に、冬はごぼうの含め煮など。
旬のものを選ぶのはもちろんですが、調理法や風味・味付けにも季節感を取り入れてみましょう。四季折々の素材と食べ方に気を配って、日々の食卓を楽しみたいですね。
参考文献
大野林火監修 俳句文学館編『入門歳時記』 角川学芸出版
大森一慧『からだの自然治癒力をひきだす食事と手当て』サンマーク出版