本格的な冬が始まったかと思うと、15℃を超える気温になったりと天候が安定しませんが、新年は確実に近づいています。もういくつ寝るとお正月ということになりますが、普段は走らない人でも気になるお正月のイベントのひとつが駅伝ではないでしょうか。
毎年テレビで見ているけど、ルールがよくわからないという人もいれば、長すぎて途中で飽きてしまうという人もいますよね。そこで今回は、駅伝のルーツやマラソンとの違いについてご紹介します。
駅伝のルーツは古代の伝達制度にあり
日本で初めて駅伝が行われたのは1917年。首都が東京に移転して50年を記念して、読売新聞社が東海道駅伝徒歩競走を開催したのが始まりです。スタートが京都三条大橋、ゴールが東京上野の不忍池までを23区間に分けて走りました。
あまり知られていませんが、上野公園の不忍池と三条大橋のたもとには「駅伝発祥の地」の碑があります。訪れたときにはぜひ探してみてください。
そのルーツは江戸時代の飛脚にあると言われていますが、それなら東海道「飛脚」徒歩競走になりそうなものですよね。
実は駅伝というのは7世紀頃に行われていた情報伝達制度のことで、当時は馬を使って情報伝達を行っていました。馬は長い距離を走り続けることができないので、途中で休憩をしたり乗り換えたりするために駅(うまや)を設置していました。この駅伝制は10世紀には廃れてしまいます。
それから時代が流れて江戸時代になると駅伝制が飛脚制度として再構築されます。飛脚というと1人で手紙などを目的地に届けたというイメージがあるかもしれませんが、ほとんどの飛脚は宿場町で別の飛脚にバトンタッチして、効率的に情報伝達をしています(バトンタッチせずに1人で走った飛脚もいます)。
この飛脚制度を参考にして開催されたのが、東海道駅伝徒歩競走です。直接のルーツは飛脚にありますが、実はさらに遡った時代に「駅伝制」という制度があったことを覚えておくと、どこかで話のネタになるかもしれません。
駅伝は仲間のために走る競技
マラソンと駅伝は似ているようで、実は大きな違いがあります。マラソンは個人競技であり、自分自身のために走ります。ところが駅伝は団体競技であり、チームのために走ります。
どちらもベストを尽くすという意味では同じに思えるかもしれませんが、人間とは面白いもので、自分のためとなると苦しみに耐えられない人も、誰かのためとなると普段以上の力を発揮して、苦しみに耐え抜いて襷(たすき)を繋ぐことができます。
襷をつなぐということは魂を繋ぐことであり、伝統を繋ぐことでもあります。それゆえに選手として選ばれるのは名誉なことなのですが、時としてそれがプレッシャーになってしまうこともあります。もし途中で転倒して走れなくなったら、襷がそこで途切れてしまいます。
さらに駅伝には、繰り上げスタートというルールがあり、先頭が襷を繋いでから決められた時間が経過すると、次走者は襷を受け取らずに強制的にスタートを切らなくてはいけなくなります。このため大きく失速すると、やはり襷を繋げなくなります。
そういうプレッシャーを感じると、体調を崩してしまう選手やフォームが崩れて後半に大きく失速する選手が出てきます。その結果、優勝候補が惨敗することもあり、反対に飛び抜けた存在のいないチームが勢いに乗って優勝するということもあります。
ちなみに今年のニューイヤー駅伝では、過去2回の優勝経験があり、2020年の優勝候補のひとつでもあった富士通が予選落ちするという波乱がありました。ゴールするまではどこが勝つのか、誰にもわからないというのが駅伝の面白さでもあり、難しさでもあります。
仲間を誘って駅伝を走ってみよう
駅伝というと実業団や大学生の競技と思っている人もいるようですが、実は市民ランナー向けの駅伝が全国各地で開催されています。大会によってはリレーマラソンとなっていることもありますが、1区間が3〜5kmと比較的短いものから、1チームで42.195kmを繋ぐものまで様々な大会があります。
どんなに苦しくても仲間が待っていると思うとがんばれるので、驚くようなタイムが出ることもあります。その経験をしていると、駅伝を観るときに選手の気持ちがわかってくるので、熱のこもった応援ができるようになります。
仲間を集めるのは大変かもしれませんが、新年の駅伝が終わった直後なら、駅伝を走りたいモードになっている人がたくさんいるはずです。事前にいくつかレースをピックアップしておいて、新年会などで「出てみようよ」と誘ってみるといいかもしれません。
仲間を誘って駅伝観戦に行くのもおすすめです。ただしお正月は気温が下がりやすいので暖かい服装をして応援に行きましょう。年始から風邪などひかないように気をつけてください。