日ごとに朝晩の冷え込みが強まり、お風呂でゆっくりと身体の芯から温まりたいと思う季節になりました。ただ、消費者庁の調査(*1)によると、高齢者の家庭の浴槽における溺死者数は増加傾向にあり、入浴時のおぼれる事故は11月から3月にかけて多く発生しています。
11月26日は「いい風呂の日」。寒い季節の入浴を安全に楽しむためにも、この機会に入浴事故の原因の1つとされている「ヒートショック」について考えてみませんか。
家の中で寒いと感じる場所は?
これから北日本や本州の内陸部などでは朝晩の気温が氷点下になる日が多くなり、各地で冷え込みが強まります。ただ、寒いのは屋外だけではなく、家の中でも冷え込みやすい場所があります。
戸建て住宅に住む首都圏在住の女性200人に聞いた調査(*2)で、冬に家の中で寒さを感じる場所があるかどうか聞いたところ、最も多かったのは「洗面室・脱衣所」で、全体の71%でした。続いて廊下、玄関、トイレが50%以上となっていて、多くの人が家の中で寒さを感じているようです。
冬の入浴は夏よりヒートショックのリスクが高い
ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所への移動など、温度の急な変化が体に与えるショックのことをいいます。暖房の効いたリビングなど暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室に移動し、そのあと熱いお湯を入れた浴槽に入るという急激な温度変化によって血圧に大きな変動が生じます。このことが、めまいや失神、場合によっては心臓発作などを引き起こす原因となり、入浴事故につながるのです。
寒い時ほど熱いお湯に浸かりたいと思うかもしれません。ある調査によると、冬は夏に比べて浴槽のお湯の温度を高めに設定する人が多く、推奨温度が41度以下にも関わらず、最も多いのが42度でした。
冬の脱衣所や浴室の温度は、推奨温度が18度以上にも関わらず10度くらいですから、浴槽のお湯の温度が42度くらいだとすると、その差は32度になります。一方、夏は脱衣所や浴室の温度は25度くらい、浴槽のお湯の温度は38度くらいで、その差は13度です。
温度差が大きいほどヒートショックのリスクが高まります。冬は室温が低いこと自体も体に影響を与えるので、夏よりも冬の方が入浴事故の危険が大きいことが分かります。
ヒートショックを防ぐには
ヒートショックを防ぐために大切なのは、寒い場所と暖かい場所との温度差を小さくして、体への負担を減らすことです。つまり、寒い脱衣所や浴室を暖かくして、熱いお湯の温度を少し低くすることがポイントとなります。そのためにすぐにできる工夫(*1)のうち、主なものをご紹介します。
①入浴前に脱衣所や浴室を暖める
お湯はりの時にシャワーを使うと、シャワーの蒸気で浴室全体を暖めることができます。
浴槽のふたを開けておくのも効果があります。
また、脱衣所は衣服を脱いでも寒いと感じないくらいに暖めておきましょう。
②お湯の温度は41℃以下、湯に浸かる時間は10分以内を目安に
浴室との温度差を小さくするために、お湯の温度は41℃以下に設定しましょう。
脱水症状を防ぐためにも、お湯に浸かる時間は10分以内が安心です。
③浴槽から急に立ち上がらない
倒れて溺れないように、手すりや浴槽のへりを使ってゆっくり立ち上がるようにしましょう。
④食後すぐ、または飲酒後の入浴は控える
食後に血圧が下がりすぎて失神することがあるので、食後は少し時間をおいてから入浴するようにしましょう。飲酒後も時間をおいてください。
寒い時期の入浴事故を防ぐためにも、すぐにできることからぜひ始めてみてください。
日本気象協会では、ヒートショックの知識や対策をより多くの人に知ってもらうため、ヒートショックの啓発プロジェクト「STOP!ヒートショック」をサポートしています。また、日本気象協会は東京ガスと共同開発した「ヒートショック予報」について、tenki.jpでも提供していますので、ぜひご活用ください。
出典元
(*1)消費者庁 News Release みんなで知ろう、防ごう、高齢者の事故② 平成30年11月21日
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/
(*2)ダイキン(株)NEWS LETTER 2019年2月18日
https://www.daikin.co.jp/press/2019/20190218/