今年の9月、北海道の「今金(いまかね)男しゃく」がGIに登録されました。GIとは農林水産省の「地理的表示」のことで、生産地の気候・風土・伝統ならではの品質・特性をもった産品が登録され、「地理的表示保護制度(GI制度)」によって知的財産として保護されます。たとえば、但馬牛、夕張メロン、八丁味噌、いぶりがっこなどもGIに登録されています。「今金男しゃく」は、北海道の南西部に位置する今金町(いまかねちょう)のブランドいも。9月にGIに新登録されたこの男爵いもは、いったいどんな味がするのでしょう。
昼夜の寒暖差で「でんぷん含有率」が高くなる。ゆえに甘くなる!
北海道の南西部に位置する今金町は、人口5000人ほど。明治24年からジャガイモの作付けが始まりました。
今金町の男爵いもはGIに登録されるずっと以前から、北海道民の間でも「おいしい」と評判でした。また、東京の料理店などでも話題になっていました。なぜ、今金町のジャガイモはおいしいのでしょう。
それは、今金町が海に面していない内陸型の気候であるがゆえに、昼と夜の寒暖差が大きいため、ジャガイモのでんぷんの含有率が13.5%と高く、甘みがたっぷりで、しかもホクホクとしながらも粘りのある食感になるからなのです。
また、今金町を流れる「後志利別川(しりべし としべつがわ)」は、「水質が最も良好な河川」に18回も選ばれています。これは全国で最も多い選出回数です。昼夜の寒暖差ときれいな川。これらの恵まれた環境によって、今金町では男爵イモがおいしく育つのです。
25年以上の実績、独自の特徴、3段階の選果…。厳しい品質管理
今金男しゃくは、町内の60戸ほどの農家で作られています。収穫する時のでんぷんの含有率を高く設定している徹底ぶり。それゆえに、特に味をつけなくても、イモそのものの味でも勝負することができます。
農林水産省によるGI制度は、地域の特徴がその品質に結びついた特産品を登録し、生産業者の利益の保護を図るというもので、ニセモノや不正な表示を排除することができます。
今金男しゃくがGI制度に登録されるにあたり、農家の品質管理も評価されました。専門の農家が種イモを作り、栽培するときはほかの品種と交ざらないようにします。そのためか、イモの味そのものにも独自の特徴があります。生産実績は25年以上。また、選別は手作業で分けたあと、センサーでイモの内部に空洞がないかを確認し、さらにもう一度、手作業で規格を見極めます。
このように、農家の努力と厳しい品質管理のもと、今金男しゃくは、ほかのどこの地域にも負けない、ブランドいもとなったのです。
〈参考:JA今金町「今金男しゃく」〉
農林水産省:地理的表示(GI)保護制度
農林水産省:GI登録産品一覧
湖池屋が「今金男しゃくのポテトチップス」を限定販売し、話題に
今金男しゃくが脚光を浴びたのは2015年にさかのぼります。あの湖池屋が、「今金男しゃく」を使ったポテトチップスを限定販売し、これが大きなきっかけになりました。「幻のジャガイモを使ったポテトチップス」ということで年々話題になり、今年は9月に予約を始めたところ、10月までの1ヵ月間ですでに、受注が昨年の2倍以上にもなりました。
今金男しゃくはでんぷん質が多いので、油で揚げると焦げやすいため、ポテトチップスには向いていないとされていました。しかし、湖池屋はイモの切り方、揚げ方や油の種類など、あらゆる面に工夫をこらし、「最高のポテトチップス」が完成したとしています(湖池屋のホームページより)。
〈参考:北海道新聞夕刊2019年10月26日号1面「“今金男しゃく”脚光」〉
〈参考:湖池屋「今金男しゃくポテトチップス」〉
〈参考:今金町「水質が最も良好な河川として“後志利別川”が選出されました」〉
今金男しゃくは、全国に流通している男爵イモの、わずか0.3%しかないため、「幻のジャガイモ」とよばれています。今金町農協では販路を拡大するために、レトルトカレーなど加工品の開発にも乗り出しています。厳しい基準と徹底した管理で栽培されている今金男しゃく。一度食べてみたいですね。