初夏の北海道はラベンダーをはじめ、ウニ、夕張メロン、とうもろこしなど、グルメも見どころも満載です。そしてこの時期、花やグルメのように華々しくはありませんが、北海道でほっこりする風景が、丘に転がる「麦わらロール」です。見ていると思わずニッコリとしてしまうような、コロンとした麦わらロール。初夏の北海道で一度は見ておきたいですね。
麦を刈り取った後のワラで作る。初夏の北海道の風物詩
日本の小麦生産量は北海道がダントツの1位で、ほぼ7割を占めます。麦の収穫は年に2回あり、春に種をまく春まき小麦は秋に収穫し、秋に種をまく秋まき小麦は初夏に収穫します。
7月も中旬になると、北海道では秋まき小麦の収穫が始まります。この時期になると十勝や美瑛などの広大な小麦畑では、丘の斜面に麦わらでできた巨大なロールが転がっているのをよく見かけます。これが「麦わらロール」です。
麦を刈り取った後の小麦色の畑に、コロコロと不規則に転がっているその姿は、まるでお菓子の「クリームコロン」。この時期をねらって写真を撮りにくる観光客も多いようです。
麦わらロールは専門用語で「麦稈(ばっかん)ロール」といい、牧場などに買い取られ、牛や馬のフカフカの寝床になります。このように、小麦は麦の実を収穫するだけでなく、ワラも利用されているのです。
牧草ロールは牛の飼料。巻いてラップして発酵させる
麦わらロールとよく似ているのが「牧草ロール」です。ラップをしていないと、麦わらロールも牧草ロールも素人には見分けがつきません。ただ、根本的に違うのは、その中身と保存方法です。
牧草ロールはその名の通り中身は牧草です。冬の間、牧草が生えない時期、牛のエサ用に牧草を乾燥させて保存しますが、ひと昔前まではサイロで保存・発酵させるのが主流でした。しかし、サイロは建設費が高く、また、サイロの中に牧草を詰めるときに酸素が不足するため、危険な作業でもありました。
今では安全で手間がかからないラップ方式が主流となっています。牧草を刈り取ってロール状にし、ラップでくるむと、2~3週間で発酵され、牛にとって「食べごろ」になります。
牧草を刈り取った丘には、白や黒、白と黒のシマシマなど、いろいろな色でラップされた牧草ロールが転がっています。特に白くラップされている牧草ロールは、まるでマシュマロのように見え、こちらも観光客に人気です。
麦わらロールとの見分け方は、ラップされていれば牧草ロール、されていなければ麦わらロールです。
フカフカの麦ワラは牛のベッドに。使用後は堆肥になって畑に戻る
牛や馬の寝床になる麦わらは、フカフカに乾いていなければなりません。そのため、麦わらを集める酪農家たちは、天気予報とにらめっこして、連続して晴れる日を選んで麦わらロールを作ります。
まず、小麦の実を刈り取った後の株を根元から切り、麦わらを広げて乾かします。その後、わらを一列に並べ、ロールベーラーという機械で圧縮しながら巻いて出来上がり。牧草ロールと違って、ラップをしません。
牛や馬が寝床で使った麦わらは回収され、堆肥になって畑に戻り、再び小麦が育つ土壌の栄養分になります。土→実→わらが堆肥に→土…。小麦はこうして循環を繰り返しています。
〈参考:北海道「麦ができるまで」〉
〈参考:JAきたみらい「小麦」〉
〈参考:酪農学園大学「牧草ロールの秘密」〉
北海道の小麦を刈り取った後の広~い丘に無造作に置かれている麦わらロール。直径が1.5mもある大きな巻き物ですが、遠くから見ると、まるで丘にお菓子が転がっているように見えますね。見どころいっぱいの初夏の北海道ですが、今年の夏は、ほっこり和む麦わらロールもぜひ見ておきたいですね。