梅雨入りの便りがあちこちから届いていますが、きたる6月22日の夏至に向けて、日に日に日が伸びています。季語でいう「短夜(みじかよ)」や「明易し(あけやすし)」を実感する方も多いのでは?
さて、雨と合う植物といえばアジサイを思い浮かべるかもしれませんが、夏に見ごろを迎える水生植物も忘れてはなりません。代表的な蓮の花をはじめ、多種存在しています。水に浮かぶもの、水の中に咲くもの……いかにも涼しげですね。今回はそんな不思議な水生植物について調べてみました。
そもそも水生植物とは何もの?
水生植物は、一般的に「水草」と呼ばれる植物です。植物はもともと、水の中から進化して陸上で適応できるようになりました。しかし、成長するためには水が必要であり、一部の植物が再び水の中に戻っていったとされています。水生植物は水の中で光合成ができるほか、水の中で受粉できる種類もあるそうですよ。
分類的には、浮水植物(ウキクサなど)・沈水植物(クロモなど)・浮葉植物(ヒツジグサなど)・抽水 (ちゅうすい) 植物(ハスなど)などに分けられ、日本だけでも約500種類あるそうです。
次に代表的な水生植物をご紹介しましょう。
語源で納得「河骨(こうほね)」
スイレン科の多年生水草。池や沼、浅い川などに生息し、6~7月頃水上に茎を伸ばし黄色い花を咲かせます。肥大した茎が泥の中を横に這い、この茎が骨のようだからとも、折ると白い白色の多孔質であるためとも言われているそうですよ。
けっこう不気味!? 「睡蓮(すいれん)」
スイレン科の多年生水草で、在来種は7月頃蓮(はす)に似た5~10センチの白い花を咲かせます。別名「未草(ひつじぐさ)」といい、その由来は、未の刻(午前2時頃)に花が咲くからとも。世界で40種類ほどあり、色とりどりの園芸種があるそうです。
古代からのロマン「蓮(はす)の花」
ハス科の多年生水草。7月頃から根茎から長い花茎を水上に出し、大きく美しい花を咲かせます。花弁は16枚で、朝に咲き、夕方に閉じる、を繰り返し4日目に散ります。仏教と深い関係があるとされ、仏陀の誕生を告げて咲いたとされるほか、極楽世界の中心に蓮の花があるとされています。昭和26(1951)年に千葉市検見川の2000年前の土壌から大賀一郎博士によって発掘された種が発芽し「大賀蓮(おおがはす)」として現在も多く栽培されています。また、蓮の花弁を「蓮華(れんげ)」と呼び、食器であるレンゲはこれが語源なのだとか。
絶滅危惧種もある「花藻(はなも)」
金魚藻、立藻、総藻、杉葉藻などは春に繁殖し夏に花を咲かせます。中でも、キンポウゲ科の「梅花藻(ばいかも)」は、6月~7月梅によく似た花が水中で咲き、生育条件が「水温が年間を通して15度前後」「常に水の流れがある水位が低い場所」でしか育たないと言われる絶滅危惧種の水生植物です。滋賀県米原市の醒ヶ井(さめがい)にある地蔵川が有名ですが、ほかにも、静岡県三島市・福井県越前市の治左川・兵庫県美方郡・鳥取県米子市の本宮川・兵庫県多可郡多可町などが名所だそうですよ。
ここからは番外編。自然の花ではない夏の花もありますよ。
ノスタルジーを誘う「水中花」
江戸時代に酒宴の席で花を浮かべたのが始まりとされています。鉋(かんな)屑や強靭な紙で作られ、水中に入れると開く仕組みになっていて、いつまでも色あせなく、開きっぱなしが哀れを感じさせますが、見た目の涼しさも感じます。
これも美!「花氷(はなごおり)」
大きな氷の中に、花や草花を閉じ込めた氷柱。以前はデパートなどに置かれていましたが、冷房が完備された現在では見る機会が少なくなりました。側に行くとひんやりとし、夏の風物詩として季語となっています。
(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫/入門歳時記 大野林火・著 角川学芸出版/広辞苑/俳句の花図鑑 成美堂出版/HORTI/たびはう)
もっと面白い花の見方
夏の花は春に比べて地味な花が多いといわれていますが、地球上のあらゆる生物は水から生まれたという仮説があります。
──言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。
今回紹介した植物の生態や語源には、かなりミステリアスな部分もありましたね。それをふまえて鑑賞すると、より親近感、より夏らしさを感じるのではないでしょうか。