関東地方も梅雨入りし、本格的な雨の季節となりました。
梅雨に入る最初の日を「入梅」といいますが、「気象上の入梅」と「暦の上の入梅」があるのをご存じでしょうか。今回は、ふたとおりある「入梅」と、「五月晴れ」の本来の意味をひも解いてみましょう。
江戸時代、梅雨入りの日はあらかじめ暦に記されていた
6月6日にはじまった二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」。この時期におとずれる長雨「梅雨(つゆ)」は、七十二候の末候にあたる「梅子黄(うめのみきばむ)」に由来します。梅雨入りと時を同じくして、梅の実が黄色に色付くこの時季。梅雨という言葉は、梅の実が熟す頃の雨という意味なのですね。湿度が高くカビが生えやすいことから、「黴雨(ばいう)」とも書くことがありました。
古くさかのぼると、「入梅(にゅうばい)」は芒種に入ってから最初の壬(みずのえ)の日とされていましたが、現在は太陽黄径80度の日とされています。芒種から数えて6日目頃にあたり、今年は6月11日が暦の上での入梅となります。当然ながら、気象上の梅雨入りとは異なりますが、昔は農家にとって田植えの日を決めるうえでも、梅雨の時期を知ることは重要でした。現在のように気象情報が発達していなかった江戸時代、暦の上での入梅を設けて雑節のひとつとして農作業の目安としていたのですね。
入梅に対する言葉が「出梅(しゅつばい)」。あまり馴染みがないかもしれませんが、梅雨明けをこのように呼んでいました。現在の7月7日から16日頃にあたり、入梅から約30日が暦の上での梅雨とされていました。
本来の「五月晴れ」は、あまり清々しくない⁉
5月の連休あたりの清々しく晴れ渡る青空。「五月晴れ(さつきばれ)」という言葉から、このようなイメージを連想する方も多いのではないでしょうか。本来の「五月晴れ」とは、旧暦の「梅雨の晴れ間」「梅雨の合間の晴天」を指す言葉でした。すっきりとした晴天ではなく、むしろ夏の到来を予感させる蒸し暑い晴れの日だったのですね。近年は、「新暦の5月の晴れ」の意味合いでも使われるようになりましたが、俳句の世界では、今も夏の季語にあたります。
同じように、「五月雨(さみだれ)」も旧暦の梅雨時の天候を表す言葉です。陰暦5月頃に降りつづく長雨、つまり五月雨は梅雨のことなのです。
毎年気になる、梅雨入りと梅雨明けの日。昔は「入梅」「出梅」として、あらかじめ暦に記載されていたのですね。昨年は、関東地方の梅雨明けは、6月中という異例の早さでした。今年はどのような雨の季節になるのでしょうか。
参考文献
岡田芳朗・松井吉昭 『年中行事読本』 創元社 2013