爽やかな青空、盛りの新緑、色とりどりの花々。そんな中、可憐な白い花をさかせているのはサンザシたちです。
サンザシはバラ科、中国原産の落葉低木で、朝鮮半島経由で1734年に薬用植物として、日本に伝わりました。果肉とタネは健胃、整腸剤として用いられ、魚の中毒をけすとされ、漢名は山査子で、日本ではその読みが、そのまま和名として使われるようになりました。ヨーロッパではセイヨウサンザシが、生け垣や街路樹として多く栽培され、5月の花メイフラワーとして愛されています。
本日は、この季節は花を愛で、秋には果実や紅葉を楽しみ、漢方や美容健康の食品・飲料としても親しまれているサンザシについてせまります。
神木といわれる由縁は?イエス・キリストと縁の深いサンザシ
英名はメイフラワーとされますが、ホウソーン(Hawthorn)とも呼ばれます。サクラやリンゴなどの花は「フラワー」ではなく、「ブロッサム(blossom)」といわれるように、メイブロッサム(May blossom/5月の花)と呼ばれることもあります。5/1のメイデーに女王を選び、サンザシの花で飾るのだとか。
イエスが森で休んでいると追手がやってきてつかまえようとしますが、そこへサンザシの枝を加えたカササギがたくさんとんできてイエスの体を守ったといわれています。追手がいなくなり、今度はサンザシの枝や葉を、今度はツバメが飛んできてとりのぞき、イエスと助けたとのこと。一方で最後十字架にかけられたイバラの冠も、サンザシの木の枝でつくられたともいわれています
サンザシの仲間は、北半球の温帯に約200種が分布する落葉木で、ごく少数、常緑性のものがあります。セイヨウサンザシの果実や葉は、ヨーロッパではハーブとして心悸亢進、心筋衰弱などの心臓病に使われてきました。いまは、 改良されてピンク色の八重咲きなどの種類もあります。
サンザシには食べてよい実とそうでない実がある⁉
日本には北海道にオオバサンザシ、北海道と長野県にはクロミサンザシが自生しています。また、ピラカンサともよばれ同じように白い花を咲かせ、赤または黄茶色の実をつけるトキワサンザシや、果実が黄色に熟するキミノサンザシもよくみかけます。
サンザシは、寒冷地に自生し、暑さに強い種類も多く、寒さにはきわめて強いため、栽培は比較的簡単です。この季節の花や、秋の果実や紅葉も観賞できる庭木としていかがですか?
お馴染みの歌の、まさにこの道には、初夏には、山査子の白い花が可憐に咲いていたのでしょうね。
「この道」
山田幸作:曲 北原白秋:詩
1、この道はいつか来た道、 ああそうだよ、あかしやの、花が咲いてる。
2、あの丘はいつか見た丘、 ああそうだよ、ほら白い、時計台だよ。
3、この道はいつか来た道、 ああそうだよ、お母さまと、馬車で行ったよ。
4、あの雲もいつか見た雲、 ああそうだよ、山査子(さんざし)の枝も垂(た)れてる。
ローズヒップやアセロラのような味わいのサンザシ
サンザシやオオミサンザシの干した果実は、生薬名で山査子(さんざし)といい、消化吸収を助ける作用があります。加味平胃散(かみへいいさん)、啓脾湯(けいひとう)などの漢方方剤に使われます
果実を潰して、砂糖や寒天などと混ぜ、棒状に成形して乾燥させたものが多いです。中国では、「山査子餅」(シャンジャーズビン)という円柱状に成形した後、薄くスライスして10円玉のような形状にしたものも多いです。酢豚にいれることもあるそうです。
甘酸っぱく、ビタミンC、クエン酸、カテキンをはじめとするポリフェノールが豊富で、最近はスーパーフードとして見直されています。山査子のジュースやお酒、お茶も美味しそうですね。
運動会や祭りの季節がはじまりました。休日の行楽やイベントは楽しいですが疲れがたまらないよう工夫しながら、素敵な5月をお過ごしください。
参考:
花ことば~小さな花に想いをたくして~ 池田書店
みんなの趣味の園芸(NHK出版)サンザシ
ドライフルーツ サンザシ(小島屋)
さんざしドリンク(株式会社スタイルクリエイト)