令和元年の5月も半分を過ぎようとしています。初旬は天候が不安定だったり、朝晩が冷え込んだりしましたが、日中は気温も高く、汗ばむことも多くなりました。二十四節季では、5月21日から「小満」に入ります。小満とは、万物の成長する気が次第に長じて天地に満ち始める、の意味で、まさに新緑の季節ですね。
ところで、学校や企業の制服などは、一般的に6月1日と10月1日が「衣替え」の日と決まっていますが、ご家庭においても冬服を夏物に入れ替える衣更えのシーズンなのではないでしょうか。そこで今回は衣更えにスポットを当て、衣更えのルーツやお手入れ方法などを調べてみました。
「衣更え」のルーツと謎?の「きらら」
衣替えはいつから始まったのでしょうか? 衣更えのルーツは平安時代におよびます。当時の宮中で陰暦4月朔日(ついたち)=新暦の5月4日ころ(陰暦4月は4月下旬から6月上旬ころ)に、衣服から室内装飾までを替える風習があったそうです。
さらに江戸時代には、時期によって、袷(あわせ)から単衣(ひとえ)に、帷子(かたびら)へと変えていったそう。やがて明治維新で新暦が採用されると、学校や官庁などで夏服は6月1日~9月30日、冬服が10月1日~5月31日と決まりました。
次は「きらら」のお話です。きららは漢字で「雲母」と書き、マイカと呼ばれる鉱物なのですが、この場合の雲母は「雲母虫」「紙魚(しみ)」とも書く夏の季語。実はこれこそが衣服を食べる昆虫の名称なのです。
きららは、体が銀白色のウロコに覆われ、体長は1㎝ほどで尾毛が3本。キラキラと光って見え、形が魚に似ていることから「衣魚(いぎょ)」とも。衣服や書籍、紙類、羊毛製品など、澱粉の付いたものを食い荒らす害虫で、暗いところを好み、日光が苦手で走るのが早いそう。それにしても、きららという可愛い名前なのは驚きですね。衣更えのあと、きららを寄せ付けないために防虫剤は忘れずに入れましょう。
(参照:俳句歳時記(春~新年) 角川学芸出版 角川文庫/入門歳時記 大野林火・著 角川学芸出版/広辞苑)
衣更えとクリーニングの豆知識
さて、ここからは衣更えの注意点です。もちろん衣類をしまう際には、きちんと洗濯したり、クリーニングに出したりしますよね。今はホームクリーニングが当たり前ですが、本当に大切にしたい衣服はやはり専門店に任せたいもの。そこで、クリーニングに出す際のちょっとした豆知識をお教えします。
■スーツは水洗いすべし
冬のスーツは全体的に暗い色が多く汚れも目立たないため、長い人だとワンシーズン着てしまいます。そのため、汚れが繊維の奥のほうまで沁みこみ、普通の洗いだけだと表面しか落ちず匂いも取れません。そこで、一度水洗いをするクリーニング方法がおすすめです。こうしておくと清潔で安心ですよ。
■繊維のヒミツ
いまやシミ抜き専門店などもありますが、実は、綿や麻など自然素材のものほど落としやすく、逆に落としにくい繊維はシルクとテンセルだそうです。また、シルク、ウール、カシミヤ、アンゴラ、モヘアなど動物系の繊維は、先ほどのきららが大好きな素材ですので、防虫剤を入れ保存もきちんとしましょうね。
■シミと変色の違い
例えば、一度だけしか着ていないので、長い間そのままにしておいたらひどいシミになっていた……なんてことはありませんか? それは汗ジミです。汗ジミはシミ抜きをしても元に戻らないことが多く、かえって浮きあがり変色状態に。変色には要注意ですよ。
■保管を上手に利用しよう
一部のクリーニング店で行っているのが保管。これを利用しない手はありません。一定の金額はかかりますが、クリーニング店で5~6カ月保管してくれますし、冬ものはかさばるので、クローゼットもスッキリして一石二鳥ですね!
きららからクリーニングの出し方まで参考になったでしょうか?
実はクリーニングに関しての豆知識の出所は、以前クリーニング店で働いていた筆者なのですが、意外なところでお役に立てました(笑)。情報は現役の元同僚にも裏を取りましたので、内容についてはご安心を。
──言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。
あと少しで季節は梅雨の時期に入ろうとしています。正確な知識をもって衣更えをし、高温多湿な夏を乗りきりたいですね。