きょう2月1日、私たち天気予報に関わる者からすると、一つの時代の変化を感じざるを得ない大きな出来事がありました。それが「気象台の目視観測の自動化」。
実は、水戸・宇都宮・前橋・熊谷・銚子・横浜・甲府・長野の8つの気象台で、人による天気などの目視観測を終了し、本日より自動観測に変わったのです。長年行われてきた「人の目」による観測が終わりを向かえ、「天気予報」は新たな時代に入りはじめたと言えそうです。
天気予報を作るために必要な「観測データ」たち
天気予報を行う上で欠かせないのがその元となる「観測データ」。
「観測」の方法は、地上で雨量計や温度計などの観測測器を使って行うもの(アメダスなど)や、気象レーダーを使って雨や雪の分布や強さを観測するもの、そしてはるか上空の宇宙から気象衛星を使って雲などのようすを観測するなど、その方法はさまざまです。
しかし、こうした機器を使った観測とは別に、実は、人が目視で観測もしていたことをご存知でしょうか?
全国各地の気象台や測候所では、職員が数時間おきに雲・視程・天気・大気現象などの目視観測を行っています。
例えば「雲の観測」であれば、①雲量(0~10で表現)、②雲形(10種類の分類)、③雲の高さ、④雲の向き、⑤雲の状態(空全体の雲のようす)といった内容を、チェックします。
また「視程の観測」は、視程目標図や視程目標の写真などを元に、「目標物が肉眼で見えるか見えないか」をチェックしています。
いずれにしても、観測者の習熟が必要で、いわば経験がものを言う仕事であると言えます。
関東甲信の8つの気象台で目視観測を終了・自動化へ
そしてこの目視観測が、関東甲信地方における東京を除く水戸・宇都宮・前橋・熊谷・銚子・横浜・甲府・長野の8つの気象台で、きょう2019年2月1日午前9時をもって終了し、自動観測に変わりました。
観測技術の向上に伴い、必要な情報が「自動」で得られるようになったことが、大きな理由です。
近年では、気象庁では数年前から「推計気象分布」といわれる情報を公開しており、これまで点的にしか観測できなかった「天気」を、面的に解析できるようにもなっています。このように、今後は測器や気象レーダー、気象衛星などの総合的な観測データを組み合わせて、「人」ではなく自動でこれらのデータが観測(判別)するようになっていく見込みです。
なお、今回終了するのは定時観測のみであり、天気予報や気象警報・注意報などのための目視監視は、今後も継続されますので、防災情報の発表に対しては影響はないとのことです。
天気予報の技術はこれからどうなるか
ここ数十年の観測技術の進化は、本当に目覚しいものだと思います。一方で、必要な情報が入手できなくなってしまうのではないかという不安の声も聞かれます。
気象庁(東京)やその他の地方では、引き続き職員による目視観測が行われますが、果たして今後どうなっていくのでしょうか。
いわゆる「職人技」のような技術が減っていくことを少しさびしく感じつつ、いかに正確な情報を把握し・伝え・安全な暮らしを守るかという気象情報の使命を、より強く意識する出来事になったといえそうです。
参考:気象観測の手引き(平成10年9月、気象庁)、金町だより(2017年1月、水戸地方気象台)