数十年前に地域や組織、イベントのPRの一環として生まれたキャラクターがその後、ご当地キャラクターと呼ばれ、更に2000年代に入り「ゆるキャラ」という言葉と共に爆発的な人気と注目を集め、知名度の高いキャラクターは、その地域をよく知る事のなかった人の目にも触れるようになり、その出身地へ足を運んだ方も多くあることでしょう。そして今、再びその価値が見直され注目を浴びブームになりつつあるのが、ゆるキャラより長い歴史を持つ日本の民芸品や郷土玩具です。テレビやインターネットなどのメディアでも取り上げられ、その地域の文化や作られた時代背景、また作り手の思いなどが込められた民芸品や郷土玩具を通して、日本やその地域を新しい眼差しで見つめ直したくなった方もあるのではないでしょうか。今回はその中でも誰しも一度は目にした事のある「だるま」と「赤べこ」について改めてご紹介いたします。
だるま願掛けは「願いを立て、精進し、無事に達成することを願う」宣言のようなもの
300年以上の歴史を誇り、多くの方が一度は目にした事のある「だるま」は、縁起物として広く知られていますが、その由来は釈迦の弟子であった達磨大師が、手足が腐ってしまう程の長い期間壁に向かって座禅を組んだその姿がモチーフとされており、不撓不屈の精神にあやかって願いや目標を立て、それに向かって努力し、成し遂げることを願うものとされています。だるまには様々な色がありますが、定番の赤色は炎や血の色でもあり魔除けの意味もあるのだそうです。そんなだるまを特によく見かけるのは、政治家が選挙で当選を果たした時に、だるまに目を入れるシーンではないでしょうか。今、政治家の方々を引き合いに出すことに若干の躊躇いを感じる政治の騒がしさは否めませんが、彼らのようにハッキリとした願いを立て宣言し、達成に向かって全力を注ぐ、という力強い意志が立っている方にはぴったりの縁起物と言えるのではないでしょうか。日本で出回っているだるまのうち8割のシェアを占めるのは、高崎だるまと言われていますが、全国各地に様々な特徴を持っただるまがありますので、そちらもチェックしてみてくださいね。
力強く、忍耐強く、あなたの元へ幸せを運ぶ赤毛の牛「赤べこ」
上下左右に首をゆらゆらと揺らし、見ている人をほっこりとした気持ちにさせる「赤べこ」は、福島県柳津町の伝説が発祥とされています。今から400年程前に起こった会津地方の大地震によって被災した虚空藏堂の再建時に使われる大きな材木を、川を利用し黒毛の牛の力を借りて運ぼうとしましたが、再建場所の巌上まで運ぶ事が大変困難で作業する人々が困り果てていました。すると、どこからともなく現れた赤毛の牛がその運搬を後押し、無事、巌上にその本堂が建立されたそうです。そして、いつの間にかいなくなっていたその赤毛の牛に感謝の気持ちを込めて撫牛が造られ、またその牛を「赤べこ」と呼ぶようになり、現在の郷土玩具の形になっていったそうです。また、会津地方で天然痘が大流行した時に、赤べこを持った子供だけが感染しなかったという言い伝えがあり、これらの歴史から「幸福を運ぶ牛」「子供のお守り」と言われ縁起物とされています。
ご紹介した民芸品、郷土玩具はたったふたつですが、日本にはまだまだ多くの素晴らしい、可愛らしい、身近に置いておきたくなるような民芸品や郷土玩具が長い歴史を持って存在しています。住んでいる場所のそれらはもちろん、訪れたその地域でも是非探してみてくださいね。あなたとの出会いを心待ちにしているかも知れません。