気温が高くなり、冷やし中華の季節がやってきました。冷やし中華というと、冷たい中華麺にキュウリやハム、錦糸卵をのせ、甘酸っぱい醤油ベースのタレをかけたものを思い浮かべますが、地方によってはこれを、冷やしラーメンや冷麺とよんでいるようです。地域でよび方が違う冷やし中華。あなたの住んでいる地方では、何とよんでいますか?
甘酸っぱい醤油ダレをかけた冷やし中華は、日本で生まれた“日本料理”
冷たい中華麺の上に紅しょうがや錦糸卵、キュウリやハムなどをのせ、酸味のある醤油ダレをかけて食べる「冷やし中華」は、昭和のはじめごろ、仙台で生まれたといわれています。
中華料理といえば熱々の料理が多いので、まだ冷房設備が整っていない昭和のはじめごろは、夏になると中華料理店の売り上げが伸びず、店主たちの悩みの種でした。そこで、仙台のある店で日本のざるソバをヒントに冷やし中華が考案され、これが人気メニューとなったといわれています。つまり、冷やし中華は、中華麺を使ってはいるものの、日本で生まれた“日本料理”なのです。
北海道では冷やし中華のことを「冷やしラーメン」とよぶ
最近は東京でもおなじみとなった冷やしラーメンは、山形が発祥です。昭和20年代、山形のそば屋で生まれた冷たいラーメンは、見た目は熱々のラーメンと同じで、味も普通の醤油ベースのラーメンを冷たくしたものです。スープも普通のラーメンと同じようなダシを使いますが、動物の脂肪分が白く固まらないように植物油を使うなどの工夫がなされています。
ところが、北海道では古くから、冷やし中華のことを冷やしラーメンとよんでいます。スーパーで生ラーメンの棚を見ると、冷やし中華の写真が載った「冷やしラーメン」が複数のメーカーから売られています。瓶詰めされたタレにも「冷やしラーメンのスープ」というラベルが貼られています。
北海道の中華料理店では冷やしラーメンを注文すると、甘酸っぱいタレの冷やし中華が出てくるので、道外からきた観光客はびっくりするかもしれません。逆に、北海道の人が山形県に行って冷やしラーメンを注文すると、甘酸っぱくない醤油味の冷たいラーメンが出てくるので、これまたびっくりするかもしれませんね。
西日本では冷やし中華のことを「冷麺」とよぶ
日本の北のほうでは、冷やしラーメンというよび方に混乱が起きていますが、西日本では「冷麺」というよび方に混乱が起きているようです。
西日本では、焼き肉屋にある冷麺も、ラーメン屋にある冷やし中華も、どちらも「冷麺」とよびます。あえて区別するなら、韓国料理のほうを韓国冷麺とよぶこともあるようですが、基本的にどちらも冷麺です。
冷たい麺だから冷麺という単純な図式のようですが、東日本の人が西日本のラーメン屋に入って冷やし中華を食べたい時は、どのように注文したらいいか迷ってしまうかもしれませんね。
同じ麺でも、日本に昔からあるソバやうどんだと、冷やして食べる場合は混乱は起きませんが、中国料理や韓国料理のように、身近だけど異国の麺の場合は、日本のあちこちでズレが生じているようです。これから気温が上がり、ますます冷やし麺が恋しい季節になります。猛暑で食欲がない時は冷たい麺をツルッと食べて、暑い夏をのりきりたいものですね。