桜が咲き本格的な春を感じるようになった頃、野球ファンが待ちに待った野球のシーズンがスタートします。高校野球は現在、選抜高等学校野球大会いわゆる「春のセンバツ」が開催中。また、プロ野球は3月30日にシーズン開幕を迎えます。新聞などメディアで「球春到来」という字が躍る時期です。かつては、日本を代表する俳人正岡子規も春の野球にまつわる俳句を詠んだといわれています。球春にちなんで正岡子規と野球の関係を探っていきます。
野球狂だった正岡子規
正岡子規といえば、日本の近代文学に多大な影響を与えたとされる人物ですが、実は野球にも大きな影響を与えていたのです。
正岡子規は日本に野球が伝わったころから熱心にプレーをしていたといわれています。しかも、他のスポーツにはまったく興味を示さなかったにもかかわらず、野球だけは夢中になったのだとか。
そんな正岡子規は、このような俳句を詠んでいます。
「まり投げて 見たき広場や 春の草」
春の草が生えてきた広場をみて詠んだ句です。「まり」というのはボールのこと。広場を見て真っ先に思い浮かんだのが野球だったのでしょう。そのくらい、正岡子規が野球好きだったということがわかりますね。
野球用語の日本語訳に貢献
今では当たり前のように使われている野球用語が、実は正岡子規の手により日本語訳されたものというのをご存じでしょうか? 例えば、このような言葉があります。
バッター=打者
ランナー=走者
デッドボール=死球
フライ=飛球
これは現在でも野球用語として当たり前に使われている言葉です。
太平洋戦争中に、英語が禁止となる際にも、野球用語がすべて日本語になりましたが、正岡子規の訳が影響を与えていることは間違いないでしょう。さらには、テレビや新聞においても端的に表現できる日本語訳は欠かせないもの。日本ならではの野球文化を広めるにあたり、正岡子規は大きな役割を果たしていたのです。
季語として使われる「球春」
正岡子規は、季節ごとに野球にまつわる句を残してきたといわれています。そんな正岡子規の影響があったのかは定かでありませんが、「球春」という言葉は「季語」として認められるようになりました。2006年の『季語集』(岩波新書)に初めて掲載されました。正岡子規が知ったら、きっと喜ぶことでしょう。
このように、野球ファンにとっては、野球シーズンの幕開けが春の訪れを感じさせるものなのですね。また、球春というのは、四季がある日本だから感じられる言葉です。今ではドーム球場が増え、気候に左右されず野球ができる環境でもあります。かつて屋外球場中心だったころの春の訪れは、プレーヤーにとってもファンにとっても今の時代よりいっそう待ち遠しく感じられたことでしょう。
──いよいよプロ野球も開幕。球春を感じながら、野球シーズンのスタートを迎えたいですね。