冬の朝晩は芯から冷えるといった寒さですが、そんな寒さの中でも欠かせない大晦日の行事があります。それが「除夜の鐘」です。大晦日の夜、テレビでも23時45分から除夜の鐘の響きが映像とともに流される光景が記憶に残っている人も多いでしょう。除夜の鐘は、厳かに新年を迎える日本らしい様式ですが、なぜ大晦日から新年にかけて鐘をつき続けるのでしょうか? ── 仏教ならではの思想が詰まっている除夜の鐘に迫ります。
「除夜の鐘」の「除夜」ってどういう意味?
「除夜」は除日の夜を意味し、「除日」は古い年を除いて新年を迎えるという意味に。つまり「除夜」とは大晦日の夜のことを指します。
大晦日の夜から新年にかけて、除夜の鐘を108回つくことは誰もが知っていますが、なぜ108回もつかなければいけないのでしょうか? よく語られるのが「煩悩の数だから……」という説です。煩悩とは人の心身を悩まし苦しめるものといわれています。除夜の鐘をつく意味として、人間の中にある108の煩悩を取り除き、清らかな状態で新年を迎えようという想いがあるのです。
除夜の鐘は癒し効果絶大!?
人はある一定の「揺らぎ」を感じる音を聞くと、リラックスできるといわれています。例えば、鈴虫の鳴き声、ウグイスの鳴き声、川のせせらぎなどです。さらには、除夜の鐘も揺らぎの音として、癒し効果があるとされているのです。
また、除夜の鐘の音色のようなきれいな音を聞くことで、人の心を浄化させる作用があるともいわれています。除夜の鐘をつき、煩悩を取り払うという意味はそんな音の効果によるところもあるようです。
日本三大「名鐘」に行ってみよう
ひと口に除夜の鐘といっても、由緒あるもの、姿が立派なもの、音が美しいものなど寺によって鐘の特徴は様々です。ここでは日本三大名鐘に選ばれている鐘を紹介します。
『日本三大名鐘に選ばれている鐘』
「銘」の神護寺(京都府)
神護寺が誇るのは、鐘に刻まれた言葉です。橘広相、菅原是善、藤原敏行による銘文が刻まれており「三絶の鐘」とも称されています。
「姿(形)」の平等院(京都府)
全面に天人、獅子、唐草文様などの浮き彫りが施されている鐘。その形の美しさから国宝に指定されています。
「声(音)」の園城寺(三井寺)(滋賀県)
近江八景のひとつにも選ばれている「三井の晩鐘」。「残したい日本の音風景百選」(環境庁/1996年)にも選ばれた美しい音色です。
寺によって、一般の人でも鐘をつくことができる場所もあります。鐘をつけなかったとしても、その形や音色を近くで感じてみるのもいいですね。
── 残念なことに、最近では除夜の鐘がうるさいというクレームも出ているそう。新年を迎えるにあたりゆったりとした気持ちで鐘の音を聞けば、逆に穏やかな気持ちになれることでしょう。年末の風物詩、あらためて耳を傾けてみたいものですね。