明日から全国高校野球選手権大会もいよいよ準々決勝。お盆の時季は最高気温が9月並みというエリアも多かったため、プールに行ったのに、寒くて長時間水に入っていられなかった……というご家族も多かったようですし、心なしか、セミの鳴き声も弱々しげに感じられる天候が続きました。
そして今日8月19日は、語呂合わせから「ハイク(俳句)」の日です。あちらこちらで、そこはかとない秋の雰囲気を帯び始めると、俳人たちは夏から秋へ季語を衣替えし始めます。そこで今回は俳句の日にちなみ、俳句の楽しさの一部分をご紹介します。
擬音語と擬態語の豊かな表現
俳句は日本の文芸としては比較的新しく成立したものですが、今は日本の文学の代表的なジャンルと言えるものでしょう。
俳句の特徴として、何よりも「短い」ということがあります。
この短さと5・7・5のリズムによって、人の感情に触れる言葉を紡ぎ出すのが俳句の真骨頂です。そこで大きな役割を果たしているのが「オノマトペ」です。
「オノマトペ」は擬音語、擬態語を表すフランス語で、擬音語は実際に鳴っている音を表現しようとするもの。たとえば、犬の鳴き声を「わんわん」と表現したり、雷の音を「ごろごろ」と表現するものです。
一方の擬態語は、実際には音が鳴っていないようすを表現しようとするものです。たとえば、雪が降るようすを「しんしん」といったり、乾いていることを「からから」と表現したりすることを指します。これが日本語の表現を豊かにしていることは、いうまでもありません。
マンガと俳句に多用されるオノマトペ
オノマトペはマンガにもよく使われますね。
ものが爆発するときには「ドカーン」という擬音語、雲が浮かんでいるようすを描写するときには「ふわふわ」という擬態語が使われます。きりがないくらい例があります。
そしてマンガと同じくらい、俳句の表現にもこのオノマトペにとてもマッチしているのです。いくつか例を挙げてみましょう。
〈春の海ひねもすのたりのたりかな〉与謝蕪村
〈水枕ガバリと寒い海がある〉西東三鬼
〈鳥わたるこきこきと缶切れば〉秋元不死男
〈をりとりてはらりとおもきすすきかな〉飯田蛇笏
〈たらたらと縁に滴(したた)るいなびかり〉山口誓子
音数が極端に切りつめられた俳句だからこそ、オノマトペが大きな効果を持つのでしょう。
言語学ではm音類には何かやわらかい「感じ」、k音類にはなにかかたい「感じ」が感じられると指摘しています。この言葉と「感じ」の結びつきを音象徴と呼びます。
俳句はこの「感じ」を表現に効果的に利用しているといえるでしょう。
オノマトペ俳句は、まだまだあります。
〈三月の甘納豆のうふふふ〉坪内稔典
〈あかあかとあかあかあかとまんじゆさげ〉角川春樹
〈ロンロンと時計鳴るなり夏館〉松本たかし
── オノマトペは、気がつけば広告のキャッチコピーなどにも使われていることが多いですし、俳句ばかりでなく、オノマトペは日本語の大きな特徴が現れているようです。