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美しい5月に寄せて ── ロベルト・ シューマン「詩人の恋」


5月──。初夏のみずみずしい美しさは、世界に広く共有されているようで、たとえばドイツ歌曲の中にも初夏の美しさをうたった歌が存在します。

その中でもドイツ・ロマン派※の代表的な作曲家ロベルト・シューマン(1810-1856)の、これまた代表的な歌曲集「詩人の恋」をご紹介します。

※ロマン派 = 19世紀のヨーロッパを中心に発展した、人間の感情や個性を重視し、日常性からの離脱した音楽

ドイツ・ライプツィヒ/ロベルト・シューマンの家

ドイツ・ライプツィヒ/ロベルト・シューマンの家


「ナイチンゲールのように歌い続けるでしょう…」

シューマンは交響曲はじめピアノ曲など幅広い作品を残していますが、彼の真骨頂は何と言っても歌曲にあります。

歌曲集では「リーダークライス」「女の愛と生涯」などと並んで「詩人の恋」がもっとも有名です。

この曲の書かれた1840年は、シューマンにとっての「歌の年」とも呼ばれ、120曲もの歌曲を書いています。

この連作歌曲の詩は、ドイツの詩人ハインリッヒ・ハイネ(1797-1856)によるもので、シューマンは「歌の本」から16篇を選んで曲をつけています。

内容は、若い詩人の恋の喜びと憧れ、続いて失恋の苦しみ、終盤では過ぎ去った恋が回顧されるという、ドイツ・ロマン派的なテーマが展開します。歌はもちろん、ピアノ伴奏のメロディーにも表現の重点が置かれ、まるで独立して歌っているかのようです。シューマンは1840年にこう書いています。

「僕は自分自身が驚くほど、多くを作曲しました。僕はナイチンゲールのように、死ぬまで歌い続けるでしょう」


クララ・シューマンとの恋

この手紙は恋人で妻となったクララ・シューマンに宛てられています。シューマンの歌曲はクララとの恋愛が強く投影しているのです。

「詩人の恋」第1曲目「美しい5月に」は次のように歌われます(西野茂雄訳)。

美しい5月になって

すべての蕾がひらくときに

私の胸にも

恋がもえ出た

美しい5月になって

すべての鳥がうたうときに

私は胸にもえる思いを

あのひとにうちあけた

ピアノの分散和音にゆっくりと導かれて歌い出されるこの曲は、シューマンの作品中でもっとも美しいもののひとつです。このほかにも緊張感が支配する第9曲の「鳴るのはフルートとヴァイオリン」、ピアノの後奏が印象的な終曲の「いまわしい思い出の歌」など名曲が揃っています。

おすすめの録音はディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)とアルフレッド・ブレンデル(ピアノ)が共演した1996年にリリースされたディスクでしょう(フィリップス)。

女流ピアニストとしても知られたクララ・シューマンは、作曲家としても作品を残しています。シューマンは投身自殺を図ったのちに46歳で亡くなってしまうのですが、シューマン没後、作品を整理するなどしました。ブラームスとの親交でも有名です。

── みずみずしく生命力にあふれた初夏の緑を眺めながら、シューマンの歌曲を聞いてみてください。見慣れた風景がいっそう美しく見えてくるかもしれません。

緑の中で音楽を聴くと…

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