本格的な桜シーズンが過ぎても、春の穏やかな暖かさが続き、まさにお出かけ日和な気候がうれしい季節です。観光シーズンになり、海外から日本にやってくる観光客もさらに増えてきます。人気の東京に並び、海外からの観光客が多いのはやはり京都ですが、最近では観光シーズンにもなれば、京都や大阪の宿確保も難しくなってきています。
そんな中、京都で注目を集めているのが「京町家」の存在。古都京都らしさを感じさせる京町家とは一体どんなものなのでしょうか?
京町家とはどんな建物?
京町家とは、「1950(昭和25)年以前に伝統的木造軸組工法で建てられた木造家屋」と京都市によって定義されています。京都の人々の間では、「職」と「住」の場が一体となった家屋のことを、京町家とも呼んでいました。
京町家が建ち並ぶ地域はとても細い道の間に、家同士が密接にくっついているのが特徴。そのため間口は狭く、奥に長い間取りのため「うなぎの寝床」と例えられていたほど。ただ、狭い場所でありながらも、職と住を充実させるための知恵が京町家には詰め込まれていました。
例えば、京町家の特徴である「格子」。町家によって格子の形や様式は異なります。酒屋ならば樽を当てても平気な太い格子、炭屋ならば炭粉が外に飛ばないよう隙間の狭い格子……など、格子だけとってもこまやかな造りが京町家ならではです。
生まれ変わる京町家
江戸時代から今にいたるまで京都の象徴として残り続ける京町家。しかし、古くから残る木造建築であることからも、その老朽化がネックとなっています。この20年間で、なんと4000軒以上の京町家が失われているというのです。これは京都の文化が失われているともいえる切実な問題です。
そんな京町家の危機的状況を変えようと注目されているのが「リノベーション」という考え方。後継者がいないため引き継げなくなった京町家がたくさんあります。それでも、水まわりなどを新しくして、外観は京町家の風情を残し、宿として再生させるなどといった活用方法が見直されています。
京町家の宿が人気のワケ
かつて住居として使われていた京町家ですから、京都らしい趣を感じられる外観は残しつつ、中の設備を現代的にするという工夫が、過ごしやすい宿として人気の要因でしょう。さらに、京町家丸ごと1軒を貸しきれる宿もあり、小さいお子さん連れの家族には、ニーズが高い宿となっています。普通の宿のように隣の部屋に他の宿泊客がいるため、子どもの声が迷惑になるのでは……といった心配ごとが解消されるからです。
また、京町家の宿は場所によっては、かなりリーズナブルな価格設定をしているところも多いです。そのため、連泊で利用したい海外からの観光客も増えているのだとか。他のホテルでは味わえない美しい日本の「和」が感じられる場所ですから、海外の人々からも好かれるのは納得ですね。
――こまやかな建築様式の代表ともいえる京町家。京都の人々としても残しておきたい風景であることは間違いないでしょう。今と昔の融合によって、新しい京町家の魅力が広がることを願います。