2月の誕生石として知られる「アメジスト」。紫水晶という和名でもおなじみですね。
古代には、その色からガーネットと混同されることもあったのだとか。
他の宝石と同様、古くから装身具や護符として愛されてきたアメジスト。持つ人を守る、不思議な力があると信じられてきました。
今回は、そんなアメジストにまつわる物語をお届けします。
アメジストやシトリン、「煙」に「山」まで? 水晶あれこれ
水晶の一種であるアメジスト。独特の紫色は、鉄分の混入によるものです。
アメジストと同じく、水晶に鉄分が混ざることで「黄色」をしているものが「シトリン」。
このシトリンの黄色と、アメジストの紫色が一つの石に混在したものは「アメトリン」と呼ばれます。
このほか、アルミニウムの混入により濃い褐色をした「スモーキークオーツ(煙水晶)」も。
ちなみに、水晶ができる時に、結晶の成長が何らかの理由で途中で止まり、時間をおいて再び成長を始めることがあります。
このような現象が起きると、結晶のつなぎ目に微細な亀裂が生じます。
そこに光が干渉し、光の筋が浮かび上がって見えるのが「ファントムクオーツ(幻影が見える水晶)」。
日本では「山入り水晶」と呼ばれ、愛好する方が多いのだそうです。
お酒と関わりが深い石
ファントムクォーツの存在から来るのでしょうか、古くから「幻や夢を見せる力がある」と信じられてきたアメジスト。
身につけていると「お酒に酔わない」「酔い覚ましに効く」という言い伝えもあったようです。
一説によると、アメジストで作った瓶に水を注ぐと、その水はワインのようになりますが、酔わずに飲むことができるのだとか。
そもそも「アメジスト」の名称は、ギリシャ語の「アメテュストス」(酒に酔わない)という言葉に由来しています。
また、ギリシャ神話には酒神バッカスとアメジストにまつわる物語も登場します。気になる方は、ぜひ調べてみてくださいね。
アメジストには「邪悪な考えを取り去る」「知性を高める」「商売の才能を授けてくれる」力があると考えたのは、中世ヨーロッパの人びと。
「兵士を傷から守る」とも、「流行病から守ってくれる」とも言われ、お守りとしてアメジストを身につける人が多かったようです。
「出エジプト記」や「ヨハネの黙示録」など、聖書の世界にもアメジストは数多く登場します。
キリスト教では紫色は高貴な色、聖なる色とされ、そのため聖職者がアメジストを身につけることも多かったのです。
ある神学者は、アメジストは「完全さの象徴」であると唱えたほど。
現代に生きる私たちも、アメジストのアクセサリーをつければ、その力にあやかれるかもしれません!
参考:ジョージ・フレデリック・クンツ(鏡リュウジ監訳)「図説 宝石と鉱物の文化誌 伝説・迷信・象徴」(原書房)
塚田眞弘(松原聰監修)「天然石と宝石の図鑑」(日本実業出版社)