楽しかったお正月もあっという間に過ぎて1月4日、今日が今年の仕事始めという方も多いのではないでしょうか?
毎年、仕事始めの日になると、年末年始のあわただしい雰囲気から一変、生活も日常に戻ります。
新しい年になって初めてのお仕事、張り切っていきたいものですが、もともとはこの仕事始め、儀礼的な意味があったよう。この日は形だけの仕事をすることで、今年一年の繁栄や安全などを祈願していました。
今回は、そんな「仕事始め」についてご説明します。
仕事始めは1月4日、という企業が多いのはなぜ?
新しい年が明けてから、初めて仕事をすることを仕事始めといいます。
行政機関では、年末年始の休日が法律で定められています。
「行政機関の休日に関する法律」において、土日、祝日と共に「十二月二十九日から翌年の一月三日までの日」と定められています。12月28日、年末の休みの前日が御用納め、そして1月4日、休みが終わった翌日が御用始めです。
一般の企業でも、この官公庁の御用始めの日に準じて、1月4日を仕事始めとするところが多くあるというわけです。
もちろん、それぞれの企業によって年始の業務開始日は異なります。また、地方自治体の年末年始の休日については、地方自治法で「条例で定める」と定められています。
仕事始めは儀式だった?
もともと、仕事始めは儀礼として行われていました。
形だけ仕事をすることで、その年の豊作、豊漁や商売繁盛、安全、さらに技能の上達などを願う行事として行われていたようです。業種によってもさまざまな特徴があり、行われる日もまちまちです。
例えば農業の場合、仕事始めのことを「鍬入れ」などといい、豊作を祈願して儀礼的に鍬(くわ)で田畑を耕し、お神酒をまいたりお餅をお供えしたりします。地域によっては、雪の上で田植えを演じるなどの儀礼を行うこともありました。
山で仕事をする人は、初山入りといい、山に入って薪(まき)を一束ほど切ってくるなどしていました。この際にやはり、お神酒やお餅を持って行ったりすることもあります。
一方、漁業の場合では、安全を祈って、船の乗り初めが行われました。海の水を汲んで、航海の安全を司る神様、船霊(船玉)様にお供えしたり、網を使うかっこうをしたり、大漁旗を掲げて沖に出て戻ってきたり、地域によってさまざまなお祝いの行事がありました。
また、小売店などの商初めといえば、大勢の人出で賑わう初売りがあります。開けてみるまで中身がわからない福袋も、新しい年の運試しといった意味合いもあって、今や商初めの大切なアイテムです。
1月6日に行われる出初式も仕事始めの行事?
消防関係者の仕事始めの行事である出初式(でぞめしき)は、新春の恒例行事のひとつともなっています。
出初式の歴史は、江戸時代にまでさかのぼります。
1657年に起きた明暦の大火によって、江戸の町は大きな被害を受けました。そこで、新しい消防組織として、幕府直轄の定火消(じょうびけし)が作られ、1659年1月4日、当時の老中、稲葉正則が率いる定火消総勢4隊が、上野東照宮の前で出初を行いました。これが最初の出初式となり、以来、お正月の恒例行事として、現代にまで受け継がれています。
出初式の行われる日は、主催者によって異なりますが、1月6日に行われることが多いようです。ちなみに、東京消防庁の今年の出初式は1月6日、東京・江東区の東京ビッグサイトで行われます。
楽しかったお正月に心が残っていて、なかなか仕事をする気分になれないという方も、いらっしゃるかもしれません。仕事始めの1日だけは、形式だけのお仕事でも許される?かもしれませんね。
参考:『知っておきたい日本の年中行事事典』(吉川弘文館)、『日本人祝いと祀りのしきたり』(青春出版社)、東京消防庁ホームページ