お正月のスポーツ界を彩るビッグイベントのひとつが長い伝統を誇る大会、箱根駅伝です。
2017年1月2、3日、東京・千代田区大手町の読売新聞社前~神奈川・箱根町の芦ノ湖を往復する10区間217.1kmのレース。
2017年で93回を数えるこの大会は、日本の学生スポーツをけん引してきた大会といえるでしょう。
風、気温の変動が大きく気候との戦いも予想される過酷な駅伝ですが、年々その人気は増しているようにも感じられます。
今回は今日と明日の2日間にわたり、箱根駅伝の注目スポットをお伝えします。
前編は東京・大手町~神奈川・湘南海岸の「ロード編」をお送りします。
景色が変わる「往路」と「復路」
毎年、箱根駅伝を観ているという方にとっては、基本中の基本ですが、箱根駅伝には「往路」と「復路」があります。
1月2日の「往路」、3日の「復路」を合わせた結果で総合優勝を争います。
1区-10区、2区-9区、3区-8区、4区-7区、5区-6区がそれぞれ、往路と復路の対になるコースです。
区間によっては、往路と復路で距離が異なるところもありますが、基本的なコースは同じです。
往路と復路で同じところを走るのか……と、観ているほうは退屈にならないのかと思う方もいるかもしれませんが、不思議なほど「往路」と「復路」では景色が違って見えるのです。
特に違いが出るのが、何といっても箱根の「山」です。
辛抱強く粘り強く山を登り続ける「往路・5区」に対し、一気に駆け下り、疾走感あふれる「復路・6区」。
その他の区間にしても、レース展開の違いや上り下りの反転により、往路と復路では違った雰囲気を感じるのが箱根駅伝の魅力のひとつかもしれません。
序盤の流れをつくるポイント「六郷橋」(往路1区/復路10区)
往復で217.1kmもの距離を誇る箱根駅伝ですから、計測ポイントや人気の応援スポットはたくさんあります。
中でも、レースの流れを変える大事なポイントをいくつか紹介していきます。
まずは、レース序盤の流れをつくる大事なポイント「六郷橋」です。
大手町を出発して18.3kmの六郷橋のポイントは、緊張感あふれる1区のランナーたちがスパートをかける最大の見せ場。
1区の選手の使命としてレースを壊さないことも大事な仕事であるので、1区はしばらく団子状態が続く傾向にあります。コースもフラットな道が続くため、勝負が仕掛けにくい区間でもあります。
そんな中、終盤にアップダウンを迎え、タスキを渡す前の順位争いが激しく動き出す時間帯でもあるのが六郷橋なのです。けん制を続けてきた各校のランナーの余力がわかるスポットです。
これが復路になると、ゴールに向かう最終ランナーの出足となります。
各校のエースを苦しめる最大の難所「権太坂」(往路2区/復路9区)
箱根駅伝の中で最長区間となるのが、2区と9区の23.1km。
特に往路の2区はレース展開を決める区間として重要視されるため、「花の2区」と呼ばれ、各校のエースが配置される傾向にあります。
そんな2区の中でも最大の難所が「権太坂(ごんたざか)」です。
2区のスタート地点の鶴見中継所と3区のスタート地点の戸塚中継所の高低差は何と60m。2区の15km付近で訪れる権太坂は、2区と3区の頂上にあたる高さにあるのです。
しかも、やっかいなことは権太坂まで駆け上がっていった後には下り坂が待っているのです。さらに、戸塚に向かい上り下りが待ち構えているという、何とも難しいコースなのです。
この区間を走るランナーは30kmを走れる走力のある持ち主で、上り下りの走りの技術を持ちあわせていることが理想になります。
復路は序盤から上り下りをくり返すコースになるので、うまく自分の走りのリズムをつかめるかがポイントになります。
海風に打ち勝てるか「湘南海岸」(往路3区/復路8区)
箱根駅伝といえば、山の自然を感じることができる駅伝ですが、自然との戦いは「山」だけではないのです。
しばらく海を眺めるコースとなるのが、3区と8区の湘南海岸沿いです。
一見さわやかな光景が広がっているように思えますが、ランナーにとっては「海風」との戦いとなります。
追い風の場合はランナーを後押しする存在となるものの、向かい風の場合は全体のペース配分を頭に入れて調整しておかないと、余計な体力を吸い取られることになってしまいます。
さらに、復路の8区では、16km地点からの「遊行寺の坂」で約40mを駆け上がることになる難所もひかえています。
── ロードならではの駆け引き、アップダウンをどう攻略するかが1区~3区、8区~10区のみどころになります。
長距離の選手には、ロード向きの選手、トラックの向きの選手がいるといわれますが、20km以上を走る箱根駅伝ではロードに慣れているかも重要なポイントになるでしょう。
明日は後編の「山編」をお伝えします。