空や海の青さを連想させる、鮮やかな色合いが魅力のターコイズ(トルコ石)。
数千年前から、世界じゅうで宝石として珍重されてきました。
ちょっと不思議な「トルコの石」という呼び名ですが、こう呼ばれるようになったのは13世紀ごろのこと。
十字軍をきっかけに、東方の文物がヨーロッパに入って来るようになったのがその理由と伝えられますが、実はトルコではなくペルシャ(現在のイラン)が産地なのだそうです。
今回は、12月の誕生石「ターコイズ」の歴史をひも解きます。
青だけじゃない? ターコイズの色いろいろ
「ターコイズ」といえば、鮮やかなブルーを連想する方も多いかもしれません。
実際のターコイズは、白っぽいもの、緑がかったもの、と色合いもさまざまです。
緑っぽいものは鉄の作用、青いものは銅の作用でこの色になるのだとか。
ネイティブアメリカンの人びとが神聖視したのは、青いターコイズ。
動物をかたどった護符、アクセサリーなどに用いたほか、獲物に向かってまっすぐ進むよう、矢にターコイズの装飾をつけることも行われていました。
一方、チベットの人びとは緑色のターコイズを好み、護符や装身具などに用いたのだそう。
民族や地域によって、「美しさ」「尊さ」の価値観はさまざまなのですね。
身につければ、馬から落ちない? 持つ人によって色が変わる?
古代エジプトの時代から、すでに宝石として知られていたターコイズ。
古代ローマの学者プリニウスの著書「博物誌」にも、「Callais」の名前でトルコ石と思われる記述が登場します。
面白いのは、「ターコイズを身に着けると、落下による怪我、とくに落馬から身を守る」という伝承。
トルコやペルシャ、それに東ヨーロッパなどで、ターコイズを馬具につけて護符にすることが広く行われていたようです。
ペルシャでは、ターコイズには邪悪なものを祓う力があるとして、「国の石」と定めたほど。
またインドでは、新月の時にターコイズを持つことで、幸運を呼ぶと考えられていました。
ヨーロッパなど多くの国で信じられていたのは、身に着ける人の健康状態で、ターコイズの色が変わるという言い伝え。
ターコイズの中には精霊が住んでおり、売られたり買われたりすると立腹して石から離れてしまう、ともいわれていました。
石の力を受け取ることができるのは、友情や愛情の印として贈られた場合のみ、なのだとか。
真偽のほどは不明ですが、それほどトルコ石が身近なお守りとして愛され、親しまれていたということですね。
12月の誕生石になった、その理由とは?
ちなみに、各国の伝承では、もともとターコイズは「7月の誕生石」とされていたのだそうです。
それを12月の誕生石と変更したのは1912年、アメリカの宝石商組合の提唱によるもの。
青い色が、「冬の宝石」にふさわしいと考えられたため、ルビーと入れ替わりに12月の誕生石になったそうなのです。
ターコイズといえば、「加工」「模造」が気になる、という方もいらっしゃるかもしれません。
多孔性の性質を利用して、樹脂をしみこませてから研磨する例があるそうですが、これは光沢が得られやすいようにするため。
また、砕いて粉にし、成型し直したターコイズもあるようですが、そもそも宝石の多くは、砕いて粉にしてしまうと元の色を失ってしまうものが多いのだそうです。
トルコ石は粉々にしてもその鮮やかな色は失われず、元よりも明るい色になるほどだとか。
是非はともかく、ターコイズのこうした性質を利用して、いろいろなアクセサリーが生み出されているのです。
夏の素肌にも、ニットなど冬の装いにもよく似合うターコイズ。
クリスマスや年末年始に向けて、ターコイズのアクセサリーを探してみるのも楽しそうです!
参考:ジョージ・フレデリック・クンツ(鏡リュウジ監訳)「図説 宝石と鉱物の文化誌 伝説・迷信・象徴」(原書房)
塚田眞弘(松原聰監修)「天然石と宝石の図鑑」(日本実業出版社)