気象庁は、今日11日に「エルニーニョ監視速報」を発表しました。それによりますと、昨年の春からエルニーニョ現象が続きましたが、今後、春の終わりにかけては、エルニーニョ現象が続く可能性もありますが(40%)、平常の状態になる可能性の方がより高くなりました(60%)。
●12月の実況
12月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は+2.3℃で、基準値より高い値となりました。
8月に+2.2℃となって以来、ほぼ同じ値が続いています。エルニーニョ現象発生の判断に使用している5か月移動平均値の10月の値は+2.2℃で、4月から7か月連続して+0.5℃以上となりました。
太平洋赤道域の海面水温は、日付変更線付近から東部で高くなりました。太平洋赤道域の海洋表層の水温は、中部から東部で平年より高く、西部で平年より低くなりました。太平洋赤道域の日付変更線付近から東部の対流活動は平年より活発で、中部太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)は平年より弱くなりました。
このような太平洋赤道域の海洋と大気の状態は、成熟したエルニーニョ現象時の特徴を示しています。
以上から、昨年の春からエルニーニョ現象が続いているとみられます。
●今後の見通し
実況では、太平洋赤道域の中部から東部にみられる海洋表層の暖水が、東部の海面水温が高い状態を維持しています。
大気海洋結合モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温がピークを過ぎ、西部の冷水の東進に伴い、春の終わりにかけて次第に下降し、基準値に近い値に遷移する可能性があると予測しています。
以上から、今後、春の終わりにかけてエルニーニョ現象が続く可能性もありますが(40%)、平常の状態になる可能性の方がより高くなっています(60%)。
●西太平洋熱帯域及びインド洋熱帯域の状況
【西太平洋熱帯域】
12月の西太平洋熱帯域の海面水温は、基準値に近い値でした。今後、基準値に近い値か基準値より低い値で推移し、春以降は次第に基準値に近い値で推移すると予測されます。
【インド洋熱帯域】
12月のインド洋熱帯域の海面水温は、基準値より高い値でした。今後、夏にかけて基準値より高い値で推移すると予測されます。
●エルニーニョ現象とは?
「エルニーニョ現象」が発生するのは、太平洋赤道域です。このあたりは貿易風と呼ばれる東風が吹いているため、通常、暖かい海水は西側のインドネシア付近に吹き寄せられる一方、東側の南米沖では、海の深い所から冷たい海水がわき上がっています。
ただ、何らかの原因で東風が弱まると、西側の暖かい海水が東側へ広がるとともに、東側にわき上がる冷たい海水の勢いが弱まり、南米沖の海面水温が通常より高くなります。このように、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象を「エルニーニョ現象」と呼びます。
(「エルニーニョ(El Nino)」とは、スペイン語でイエス・キリストという意味で、クリスマスのころに海面水温が高くなることから名づけられました。)
「エルニーニョ現象」は海で起こる現象ですが、発生すると大気にも影響を及ぼし、世界各地で気圧配置などがいつもとは違った状態になります。雨や雪の降りやすい場所や、風の吹き方、気温などが変わってくるのです。「エルニーニョ現象」発生時の日本は、冷夏や暖冬になりやすいと言われています。
●この先の見通し 暖冬傾向は続く
エルニーニョ現象が発生している時の冬は、暖冬になりやすく、春もエルニーニョ現象が続くと、高温になりやすいと言われています。
今回発表された情報によると、この先、エルニーニョ現象は長く続かず、春の終わりまでには平常に戻る可能性が高くなってきました。
このことから、気温が平年より高い傾向が続きましたが、春には変わる可能性もあります。ただ、冬の間は、暖冬傾向が続く見込みです。上空の偏西風は平年より日本付近では北を流れ、大陸からの寒気の流れ込みは弱いでしょう。冬型の気圧配置も長くは続かない見込みです。
ただ、暖冬とは言っても油断はできません。
来週にかけては、短い周期で強い寒気が流れ込みやすくなり、北日本や北陸は局地的に大雪になる恐れがあります。雪や寒さにしっかり備えてください。
なお、次回の3か月予報の発表は1月23日です。