気象庁は今日10日、「エルニーニョ監視速報」を発表しました。今後、来年の春にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い(80 %)と予想しています。この冬は暖冬傾向と予想されています。
●10月の実況
10 月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は +2.2℃ で、8 月と 9 月と同じ値となり、基準値より高い値でした。
エルニーニョ現象発生の判断に使用している 5 か月移動平均値の 8 月の値は +1.9℃で、上昇傾向が続いています。太平洋赤道域の海面水温は日付変更線付近から東部を中心に平年より高くなりました。海洋表層の水温は太平洋赤道域の日付変更線付近から東部を中心に平年より高くなりました。太平洋赤道域の日付変更線付近から東部の対流活動は平年より活発で、中部太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)は平年より弱くなりました。
このような太平洋赤道域の海洋と大気の状態は、エルニーニョ現象時の特徴を示しています。
以上から、今年の春からエルニーニョ現象が続いているとみられます。
●今後の見通し
実況では、太平洋赤道域の中部から東部にみられる海洋表層の暖水が、東部の海面水温が高い状態を維持しています。大気海洋結合モデルは、太平洋赤道域の中部から東部にかけて海洋表層の暖水の東進が続き、予測期間中、エルニーニョ監視海域の海面水温が基準値より高い値で推移する可能性が高いと予測しています。
以上のことから、今後、来年の春にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高く(80 %)なっています。
●西太平洋熱帯域及びインド洋熱帯域の状況
【西太平洋熱帯域】
10 月の西太平洋熱帯域の海面水温は、基準値に近い値でした。今後、春にかけて基準値に近い値か基準値より低い値で推移すると予測されます。
【インド洋熱帯域】
10 月のインド洋熱帯域の海面水温は、基準値に近い値でした。今後、冬にかけて基準値より高い値となり、春も基準値より高い値で推移すると予測されます。
●エルニーニョ現象とは
「エルニーニョ現象」が発生するのは、太平洋赤道域です。このあたりは貿易風と呼ばれる東風が吹いているため、通常、暖かい海水は西側のインドネシア付近に吹き寄せられる一方、東側の南米沖では、海の深い所から冷たい海水がわき上がっています。
ただ、何らかの原因で東風が弱まると、西側の暖かい海水が東側へ広がるとともに、東側にわき上がる冷たい海水の勢いが弱まり、南米沖の海面水温が通常より高くなります。このように、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象を「エルニーニョ現象」と呼びます。
「エルニーニョ現象」は海で起こる現象ですが、発生すると大気にも影響を及ぼし、世界各地で気圧配置などがいつもとは違った状態になります。雨や雪の降りやすい場所や、風の吹き方、気温などが変わってくるのです。「エルニーニョ現象」発生時の日本は、冷夏や暖冬になりやすいと言われています。
●この冬の見通し 暖冬傾向
今年の冬はエルニーニョ現象が続き、暖冬が予想されます。上空の偏西風は日本付近で平年より北を流れ、大陸からの寒気の南下が弱い見通しです。また、冬型の気圧配置は弱いでしょう。
最新の3か月予報(10月24日発表)によると、11月から1月の平均気温は、北日本で「平年並みか高い」、東日本と西日本、沖縄・奄美で「高い」と予想されています。
また、降雪量は北日本の日本海側で「平年並みか少ない」予想となっています。ただ、一時的でも強い寒気が南下すると、北海道や東北の日本海側、北陸などを中心に大雪となる可能性もあるため、油断は禁物です。
なお、次回の3か月(12月~2月)予報は、11月21日に発表されます。