台風15号は、発生から温帯低気圧に変わるまで1日と、台風としての期間は短かったものの、静岡県など東海地方に記録的な大雨をもたらしました。
●「台風」としては1日だけ 今年最も「短命」の台風
台風15号「タラス」は23日(金)午前9時、室戸岬の南約300キロで発生しました。台風としてはあまり発達することはなく、暴風域を伴わなかったものの、四国や近畿の一部を強風域に巻き込みながら、次第に東海地方に接近し、24日(土)午前9時に東海道沖で温帯低気圧に変わりました。
23日午前9時の発生から温帯低気圧に変わるまで1日と、今年発生した台風としては、台風の期間が最も短くなりました。(これまでは台風2号の1日と6時間)
●静岡県などで記録的短時間大雨情報が頻発
しかし、台風15号の接近に伴い、本州付近に雨雲のもととなる暖かく湿った空気が大量に流れ込んだため、静岡県など東海地方では記録的な大雨となりました。23日は紀伊半島の南東斜面を中心に雨脚が強まり、23日13時までの24時間降水量は、三重県尾鷲市で263.5ミリ、三重県紀北町で207.5ミリと、200ミリを超えました。紀北町では、平年9月の降水量が474.0ミリですので、平年9月ひと月分の約4割の雨が、たった1日で降ったことになります。
夕方から夜にかけて、愛知県東部と静岡県中部、西部では線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いているとして、東海地方に「顕著な大雨に関する情報」が発表されました。
さらに夜から翌24日早朝にかけては静岡県の広い範囲で猛烈な雨が降り続けて、「記録的短時間大雨情報」があちらこちらに連続で発表されました。
●静岡市で416.5ミリ 9月1ヶ月分の降水量の1.5倍に
24日午前6時までの24時間降水量の日最大値は、静岡市で416.5ミリ(6:00)、静岡市鍵穴で405.0ミリ(4:00)、藤枝市の高根山で403.0ミリ(3:40)、森町三倉で360.5ミリ(3:50)と、いずれも観測史上1位の値を更新しました。
静岡市の9月の降水量の平年値は280.6ミリですので、今回の雨で9月の1ヶ月分の降水量の約1.5倍の雨が降ったということになります。
記録的な大雨となったのは、南から熱帯由来の非常に暖かく湿った空気が静岡県内に吹き込んで、山沿いの斜面で強い上昇気流が発生し積乱雲が発達したこと、北側の冷たい空気と台風による非常に暖かく湿った空気との間で上昇気流が非常に強まったことなどが原因として考えられます。
●静岡県 6時間雨量既往最大比200%超え
日本気象協会の解析によると、台風15号による静岡県内の6時間雨量の最大値は、過去の統計の200%を超えた所もありました。(既往最大値統計期間は2006年5月~2021年12月)
日本気象協会と静岡大学牛山素行教授との共同研究の結果(※2)によると、既往最大比150%を超えると犠牲者の発生数が急増する可能性があり、災害発生危険度が極めて高いというデータがあります。
※1 既往最大比とは、解析雨量が1kmメッシュ化された2006年5月以降に観測された雨量の
最大値との比のこと。
※2本間基寛,牛山素行:豪雨災害における犠牲者数の推定方法に関する研究,自然災害科学,Vol. 40,特別号,pp. 157-174,2021.
●台風15号の爪痕
記録的な大雨の影響により、静岡県内を流れる菊川など複数の河川で「氾濫危険情報」が発表され、静岡県の袋井市、掛川市、浜松市などで、一時、警戒レベル5「緊急安全確保」が発令されました。また、中部電力によると、土砂崩れの影響で静岡県葵区にある送電線の鉄塔が2基倒れ、一時、広範囲で停電が発生しました。比較的短い時間に一気に大量の雨が降ったため、道路が冠水したり、低い土地に水が流れ込んだりしたほか、床上・床下浸水などの被害も相次ぎました。