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宇宙からみた オーストラリア豪雨


【宇宙からみた気象現象シリーズ第六弾】 2016年12月25日から27日にかけてオーストラリアで発生した豪雨についてリポートします。この豪雨により、世界遺産のエアーズロックがあるウルル・カタジュタ国立公園が閉鎖されたりするなど、多くの被害が発生しました。GPM/DPR、JAXAのGSMaPのデータや天気図を用いて、オーストラリアでの異例の豪雨の状況と原因をまとめました。


●砂漠気候帯でも大雨


図1は、GPM主衛星に搭載された二周波降水レーダ(DPR )による、雲と降水の強さです。動画は、YouTubeの以下のURLで見ることができます。

GPM/DPRが捉えたオーストラリア豪雨(2016年12月25日)

https://youtu.be/pDnlHWDclkU

また、図2は、JAXAのGSMaPを用いた「世界の雨分布リアルタイム」による、12月26日15時までの24時間降水量です。世界の雨分布リアルタイムでは、観測時の雲の分布や雨の分布だけでなく、24時間降水量や72時間降水量も簡単に把握することができます。

これによると、この24時間の降水量は、ノーザンテリトリーや南オーストラリア州を中心に100ミリ以上のエリアが広がっていて、250ミリを超えた所もありました。普段雨が少なく砂漠気候に属する内陸部でも、150ミリを超えた所がありました。


●降水量が平年の4倍以上に


図3は、オーストラリアや周辺諸国の2016年12月下旬の降水量の平年比です。オーストラリアでは、西オーストラリア州やクイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州で降水量が平年を下回っている地域が多いですが、ノーザンテリトリーや南オーストラリア州では降水量が平年の400%以上のエリアが広がっています。例年のこの時期と比べて、異常に多くの雨が降ったことが分かります。

エアーズロックに近いYulara Airportの観測データによると、12月26日に83.8ミリ、27日に63.8ミリの雨が降り、1ヶ月の降水量は214.8ミリに達しました。これは、平年の12月の降水量(46.5mm)のおよそ4.6倍となりました。

雨による災害は、普段降水量が少ない地域では、降水量が多い地域よりも少ない雨量で発生

します。今回のオーストラリアの事例は、内陸部の砂漠気候の地域など、もともと雨の少ない地域に異例の雨が降りました。このため、世界遺産のエアーズロックがあるウルル・カタジュタ国立公園が閉鎖されたり、ノーザンテリトリーや西オーストラリア州の州境付近で車が流されて死者や行方不明者が出たり、ノーザンテリトリー南西部の町で1メートルを超える浸水となって500人ほどの住民が全員避難するなど、多くの災害が発生したものと考えられます。


●大雨の原因は低気圧の動きの遅さ


図4は、オーストラリア気象局のHPより引用した、12月26日と12月27日のオーストラリア周辺の地上天気図です。26日から27日にかけて、オーストラリアを低気圧や前線が通過しています。図中の青い線で示した低気圧や前線の影響で雨が降りました。南半球でも、中緯度の低気圧は偏西風の影響で西から東へ進みますが、この期間は低気圧の動きが遅くなっています。オーストラリアで低気圧の動きが遅かったため、雨の時間が長引き、オーストラリアで雨量が多くなりました。


●低気圧の動きが遅かった理由


では、低気圧の動きが遅かった理由を探ります。図5は、オーストラリア気象局のHPより引用した、500hpaの高層天気図です。実線は等高度線、四角の数字は気温です。高層天気図では、高度が周辺よりも低い場所は、同じ高度で見た場合、気圧が周辺よりも低い場所ということになります。また、500hpaの高層天気図で等高度線が混み合っている所は、強い偏西風が吹いていることになります。

26日から27日にかけて、オーストラリアの南で等高度線が南北に波を打つように引かれているのが分かります。500hpaの高層天気図で等高度線が南北に曲がっている場合は、偏西風が南北に蛇行して吹いていることになります。図中の青い曲線は、強い偏西風が吹いているおおよその位置を示しています。偏西風が蛇行しないで吹いているときは、低気圧が偏西風に乗って西から東へと進みますが、偏西風が南北に蛇行しているときは、低気圧が西から東へと進みにくくなります。偏西風の蛇行は、北半球では珍しくありませんが、陸地の少ない南半球では大変珍しいことです。このため、オーストラリア付近で低気圧の動きが遅くなり、オーストラリアに異例の大雨が降りました。

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