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「巨人、球界が危機の時かな」巨人監督決定の松井秀喜氏に流れるウイニング・スピリッツ


【写真】13年5月、国民栄誉賞表彰式 笑顔で記者会見に臨む松井秀喜氏と長嶋茂雄氏(左)

ついに機が熟した、ということなのだろう。松井秀喜が、巨人軍監督就任までどれほど悩み抜いたのか、想像すら及ばない。ただ、故長嶋茂雄氏との約束を果たし、盟主巨人の歴史と伝統を継承するため、自らの人生をかけて、重大な決断を下したことは言うまでもない。

現役引退後、ニューヨークなどで何度となく、直接話す機会はあった。メディアの前の「取材」では「一巨人ファン」を繰り返し「気になりますし、応援しています」と待望論をさらりとかわしてきた。だが、本音は別のところにあった。

現役の首脳陣を気遣いつつ、苦戦が続く古巣のメンタリティーを憂慮し、時には危機感を感じさせることも少なくなかった。巨人、ヤンキースと常勝球団の主軸としてプレーし続けた結果「ウイニング・スピリッツ」の重要性が、体中に染み渡った。

敗戦を悔い、常に勝利にこだわり、現場だけでなく、球団全体が同じ方向を向く。言葉では簡単でも、メジャーでも強い結束力でまとまっているチームは、そう多くはない。本当に「強い巨人」を取り戻すためには、戦力補強だけでないことを、松井は米国にいながらも、強く憂い続けていた。

自らに求められている役割は、引退直後から認識していた。92年、長嶋茂雄はJリーグ発足でサッカー人気が上昇し、野球人気低下が叫ばれる中、監督に復帰した。松井自身、その長嶋監督からドラフトで指名を受けて入団。その後、空前の野球人気を体感した。

自らが監督に就任する時期や可能性について明言したことはない。だが、もし…との条件付きで話した際、一度だけ言った。「巨人、球界が危機の時かな」。ポツリと漏らしたひと言は、恩師長嶋茂雄の背中を見て育った松井にしか残せない言葉だった。

今季の巨人は、阿部前監督の途中辞任をはじめ、2年連続でリーグ優勝を逃し、日本一からは12年遠ざかった。勝てないことが珍しくなくなれば、ファンからの期待値も下がる。球団のイメージ、人気低下をはじめ、組織としての結束力が欠如しているとすれば、それは「危機」と言い換えてもいいのだろう。

現役時代、長嶋茂雄、ジョー・トーリらコミュニケション能力にたけた監督から、勝つ野球、そして何よりもファンのための野球をたたき込まれてきた。

ファンに喜んでもらえる野球=勝てる野球。

巨人だけではない。松井は、球界全体のために、再び表舞台に戻って来る。(敬称略)【元巨人、現MLB担当=四竈衛】

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