
【250】中日・味谷大誠捕手(23=花咲徳栄)が、9月下旬の試合で、カーブを続けたある場面について考察した。
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私が捕手のリードについて強く感じたシーンを、具体例を元に解説したい。9月22日に横須賀で行われたファーム・リーグのDeNA7X-6中日(延長10回)の中で感じたことだった。中日の先発マスクは味谷。右腕・清水達也とのバッテリーだった。
これから触れるプレーは、味谷に反省を求めるためだけの評論ではない。彼が選択した配球について、スタンドから見て感じた部分を、できるならファンの方にも分かりやすく説明するためであって、選手を批判することを目的にしていない。その上で、もちろん味谷にも深く考えてもらいたいし、同様のケースが思い当たる他の捕手、あるいは投手にも、参考になれば幸いである。
初回、DeNAの先頭打者石上に、4球すべて真っすぐで空振り三振に打ち取った。続く2回の第2打席は1死二、三塁。初球真っすぐを打たれてタイムリーを許す。そして3回の第3打席は2死一、二塁。初球カーブが高めに外れてボール。2球目、カーブが決まりカウント1-1。3球目フォークが決まって追い込み、4球目もフォークで一ゴロに打ち取った。
第1打席からの配球の流れで、私は第3打席の初球、2球目にカーブを続けたところに着目した。思ったままを言うと、危ない配球だと感じた。
第1打席で全球真っすぐ、そして第2打席ではピンチで再び真っすぐから入り痛打されている。石上も第1打席で打ち取られた真っすぐを念頭に、積極的に初球から真っすぐにしぼっていた、そういうバッティングに思えた。対して、清水-味谷のバッテリーは、第1打席のスイングから、真っすぐで空振り、悪くてファウルは奪えると判断して真っすぐを選んだのではないか。
この2打席を踏まえて、第3打席だ。味谷はどうするのかなと、思って見ていた。すると、初球にカーブを選んだものの、高めに外れてボール。真っすぐにタイミングが合っていると感じ、変化球から入ると決めてカーブ選択という流れか。ボールになったのは計算違いだっただろう。
そこで再びカーブを選び外角低めに決まるが、スイングして来なかったから、石上の裏をかいたと考えたとしたら早計だろう。まず、配球の考え方が、やや単純に感じる。真っすぐはタイミングが合いそうと判断して変化球から入り、外れたから同じカーブでカウントを奪いに行く。ストライクが取れたから良かった、ということではない。
2軍の試合ではあるが、プロ野球選手は常に1軍を想定してプレーすべきだろう。これは建前ではなく、目指すべきは1軍の試合だということを常に忘れないでほしい。味谷にそういう認識が欠如しているとは言わない。現実としてファームで、目の前の打者と勝負している。前の打席にタイムリーを打たれており、再びカウントを悪くして真っすぐ勝負にならないよう、少しでも若いカウントのうちからストライクを奪っておきたい、そういう意図は理解している。
その前提に立ちつつ考えると、少なくとも1軍の主力クラスにこの配球では、仕留められる確率が非常に高くなってしまう。その視点は忘れてはならない。続けた2球目のカーブを読み切り、ヒットゾーンに運ばれた時、味谷は打たれたことを持って学ぶことになるだうが、同じ学ぶにしてももっと駆け引きを挑んだ中で学んでほしい。
私が先述した流れは、スタンドから見ていた私の主観であることは間違いない。味谷には連続してカーブを選択した根拠があるのかもしれない。初球カーブの見送り方を見て、続けても打ってこないという確信があったかもしれない。そこは外から見させてもらった者として、あらためて本人とも話をして確認はしたいと思う。
現象面から言わせてもらえば、根拠があっての連続カーブならば、その考え方はこれからも継続してほしい。ただ、真っすぐは危険、かつカウントは整えたいゆえにカーブを続けたとしたなら、それはもう一度振り返ってほしい。
捕手の思考には、気が付かないうちに傾向というものが出てしまう時がある。特にカウント負けしている時、また、前の打席で打たれた打者に対しては、困った時の考え方に共通するものが出てしまう可能性がある。
それを打者に悟られてしまうと、一気に不利になる。たとえその打席はミスショットでしのげたとしても、こうした捕手の思考の傾向は相手チームには筒抜けになっていると覚悟しなければ。みんな見ている。捕手が次に選択しそうなボールを予測し、観察し、そして自分の打席で応用している。
そうした視線にさらされているのがプロの捕手というものだ。私が正しいということではなく、それくらい相手打者はバッテリーを研究する。投手のクセはもとより、変化球の軌道や、打たれてカッカしている時に同じテンポになりがちなこと、あるいは、捕手の考え方に偏りが出そうなタイミングなどもそうだろう。
前の打席で打たれたら、違う球種から入りがちであるとか、そこでストライクが取れないと、同じボールでカウントを整える傾向があるとか。そうなると、打者は球種を絞りやすくなり、配球を狙いやすくなる。そうなった時点で、心理的優位にたたれると、捕手としては「どうしてそんなに思い切って振ってくるんだろう?」「何か自分の配球が読まれてるのかな?」と不安になり、迷いが出てくる。
そういうところを相手ベンチは見ている。分析され、研究され、読まれる。自分の配球が読まれているのでは?と気になってしまうと不安になり、その心理は投手にも伝わることは珍しくない。私の経験上、そういう事の繰り返しの中で、捕手は失敗と成功を重ねていく。
第3打席の初球、例えば再度真っすぐを狙ってくるだろうなと感じたなら、ボール球から入る。外角低めにボールにして、反応を見る。当然、ボール先行になるから、カウントは苦しくなるが、安直にストライクを欲しがって打たれるよりもはるかにいい。そして、2球目は変化球で目先を変える。
もしくは、初球カーブから入るならば、ストライクを奪えたらその反応を観察して次のボールを選択する。ボールになってしまったなら、初球カーブへの対応を元にそこはより慎重になってほしい。手を出してこなかったからカーブを続けるというのは最後の選択だ。打者の反応で、確実にカーブ待ちがないと根拠が持てればカーブを続ける、こういう順番で考えた方が、1軍打者との対戦を想定したとしても、大きな混乱にはなりにくい。
結果論ではないか、あるいは外野から見ているだけで当事者意識にかけた評論と言われたら、特に強く反論はしない。捕手経験者が試合を見て、本能的に感じた危うさを、後輩捕手のため、転ばぬ先の杖という観点から述べさせていただいた。
繰り返しになるが、味谷にカーブを連続した根拠があるならば、そこはいずれかの機会にしっかり確認して、私の意図することもその時に伝えたいと思う。
特に何かが起きた配球ではないが、配球の傾向について心にとまったポイントとして、ご紹介させていただいた。(日刊スポーツ評論家)
