
【246】<ファーム・巨人12-5DeNA>◇27日◇Gタウン
今季ファーム・リーグ中地区の最終戦を見に行ったが、またしてもDeNA森敬斗(24)のプレーに目が吸い寄せられた。
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これも巡り合わせというものだろう。スタンドで観戦するのは今季最後の試合だった。試合前、シート打撃でセンターに森の姿はなかった。今日は出場はないのかなと思っていたが、8番センターでのスタメン出場だった。今日も森のプレーが見られるなと思ってはみたものの、毎回毎回、森だけを注目しているのも、やや気が引けた。
気は引けたが、試合が始まるとどういうわけか、やたらセンター方向へヒット性の打球が飛ぶ。そこをあえて意図的に意識の外に置くのも不自然なので、ここは流れに身を任せた。センター森を中心に視野を広く眺めていた。
特筆すべき打球処理は実に4度あった。その4度とも素晴らしいプレーばかりではない。課題もあれば、規格外の動きもあった。そこがいかにも森らしいのだが、すべての動きに共通するのは積極性だった。後述するが、前がかりで反省すべきやや過剰な積極性もあるが、それらすべてを含めて、森がセンターを専門に勝負していくためには、一度味わっておくべきものばかりだった。
まず2回、中山の右中間への打球に森の反応も、落下点に入る目測も良かった。難なく追いつき、安定した捕球で収めた。もはや、驚きではなかった。直後、今度はティマのセンターからわずかレフト寄りの打球。そのままフェンス直撃という弾道。森は背走して、この時も落下点に入るのが速かった。
ホーム側に振り返り、右手でファンスに触れながら、打球到達点を計りジャストのタイミングでジャンプ。余裕を持ってキャッチした。判断、スピード、目測、タイミングともに良かった。そして、ジャンプするという動きを採り入れた決断も良かった。追いつくことを最優先にする時、最後どう追いつくか。グラブを目いっぱい差し出すこともひとつ、そして、今回のようにジャンプすることもアイデアとして持っていれば、背走しながらも選択肢は広がる。
この類いのプレーで、最高難度は、背走しながらのジャンプになるだろう。そして、足から着地できずに体ごと地面にたたきつけられるケースが、センターとしてもっとも危険であり、困難なプレーになる。着地の衝撃でボールをこぼすことはもとより、ケガをするリスクがある。
派生して、ジャンプしながらフェンスにぶつかる。これも非常に危険なプレーになる。ソフトバンクの周東が今季も見せてくれたが、これはまさにビッグプレー。チームを救う価値あるプレーだろう。この日の森も、あれでさらに打球速度が速ければ、右手でフェンスを触る余裕はなくなり、ジャンプしながらフェンスに激突する可能性もある。
そうしたケースもいずれ出てくる。その時、この日のこのプレーが、森の中で経験則として生きる。そこが外野手としての、醍醐味(だいごみ)であり、この日の感覚をしっかり脳裏に刻んで、いつか来るであろうビッグプレーへの貴重な体験としてほしい。
さらにセンター方向への打球は続く。3回、湯浅の打球は右中間。センター方向とあえて書いたのは、厳密にはライトの打球だろうという私の判断からだ。およそ、ライトの定位置から6メートルほどセンター寄りではなかったか。走者を二塁に置いて、タッチアップが予想された。
私はライト東妻が捕球するかなと見ていたが、その視界に猛然と森が飛び込んでくる。えっ! と思った次の瞬間、捕球姿勢の東妻の前に飛び出した森が捕球。やや強引とも思えたが、もう止まらないという感じに見えた。
当然、センターからライト方向へ激走した森の体は右翼方向へ流れる。右投げの森からすれば、三塁に送球するには最悪の体勢だ。それなのに、だ。そこから体をひねり、それこそ天性の肩の強さでサードへワンバウンド送球。代走でこの場面の直前に盗塁も決めていた宇都宮を三塁で刺してしまった。
あそこは東妻が処理すべき打球だった。直後、東妻と森は何か会話をしていた。雰囲気から察するに東妻が処理すべき打球だったと2人の間で確認している感じだった。森もやや申し訳ない空気を出していたように見えた。これは私の推測なので、後日補足取材が必要になる。
守備範囲が広いことはまぎれもなく強みだ。ポジティブな要素だ。それは特に右翼、左翼が守備力に不安のある外国人選手や、肩が強くない選手の時に強肩センターの存在価値は高まる。守備範囲が広大であれば、カバーリングも望める。たとえば満塁で両翼が頭を越されたとしても、カバーが速ければ、2点目、3点目を防げる。これが実はかなり大きい。
逆に、守備範囲が広いことで連想されるマイナス面は、連係不足によるお見合いや、最悪は衝突によるケガということになる。この日の森のアグレッシブさはお見合いとは種類が異なるが、範囲を超えて激しく追ったことで、次回以降に迷いが出てくることもある。これも、失敗を経験しておかないと、どこまでが自分の捕球エリアで、どこから右翼や左翼に任せてカバーリングに回るのか、判断があいまいになる。
右打者の右中間への打球や、左打者の左中間への打球ならば、前者なら右翼方向へ、後者なら左翼方向へ切れていく打球になりがちだ。そういうことも含め、走者の足も含め、いくつかの判断材料を加味して、自分で行くのか、任せるのか判断しないと。このケースでは、東妻に託すべき打球だった。それを直後に確認していたのは良かったが、三塁で刺したから森の処理で正解という結論にはならないだろう。
最後に5回、宇都宮の打球は左中間へ。ここも左翼定位置から5、6メートルセンターよりの打球だった。これに対しても、森は猛然とチャージする。まあ、この日の森は調子も良かったのだろう。神経も研ぎ澄まされて、打球への反応も速かった。こういう時の俊足センターは、どこまでも追えるものかもしれない。
打球はワンバウンド。森はショートバウンドで処理すべく滑り込む。そこへ左翼井上絢も処理に入ってきたが、森も止まらない。滑り込む森のひざあたりが井上絢に接触。打球は外野にこぼれ、井上絢は倒れ込む。森が処理するが、打者走者もホームにかえってしまった。
さきほどの東妻のケースと近い現象で、森のチャージが過ぎてしまったがゆえのプレーと言えた。森がもう少し冷静に見極めていれば、ここの失点は防げた。厳しい言い方になるが、今の森は何が何でも、どんな打球も自分で捕ってやる、そういう意欲に満ち満ちている。それもいい。そういう時もあっていいと思うが、このミスからしっかり学ぶこと。そこが何よりも大切だ。
そして、次の機会で同じシチュエーションになった時、この日の失敗を生かせるかどうか。そこが焦点だろう。生かせれば、森のセンターとしての学習能力は機能しており、まさに失敗は成功の元として、無駄にならない。
一方で、同じ判断ミスを繰り返すと、味方も不安になる。「どうせ、森が捕りに来るだろう」となって、打球の追い方が緩くなったり、人任せになったりする可能性もある。そうなるとチームとして良くない。すべての原因の源に森の過剰なアグレッシブさが来るようになると、せっかくの能力がチームのために生かされなくなる。これは損失だ。
そうならないために、森の判断が非常に大切だ。失敗から来る経験を胸に、根拠のある判断に努めてほしい。もう猪突(ちょとつ)猛進は卒業して、いくつかの選択肢から、もっとも失点を防げる可能性が高いプレーを選ぶこと。その積み重ねが、いずれ周東へ肉薄するセンターにつながる道になると私は感じる。(日刊スポーツ評論家)
