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史上最強の日本サッカーという「空気感」は誰が作るのか?本質を捉えるべく「世界地図」


【写真】千葉戦に向けて囲み取材に応じる東京Vの城福浩監督

空気感に惑わされない-。

東京ヴエルディの城福浩監督(65)が、13日の千葉戦に向けた囲み取材の場で口にした言葉にドキッとした。

今季J1は開幕から6試合を終え、現在3分け3敗の未勝利で19位。主力選手に負傷者が多く出ており、チーム状況は厳しく映る。当然「状況は芳しくないですが…」と問われた。するとこんな回答をした。

「僕も解説(者)をやっていたこともあるのでよく分かります。“芳しくない”っていうのは誰が言うかって言ったら、そういう人たちなんですよ。このチームはいいんです、このチームは良くないんですっていうのをやっぱり分かりやすく伝えたがる。その空気感なんですよ。僕ら、空気感に惑わされちゃいけない。何が良くて何ができてないか。それはケガ人が多くて、メンバーの問題も含めてですけど、空気感に僕らが惑わされたら選手が方向性を見失う」

「やってることは正しいと思いながらも、過去のJリーグの例を見たら内容は悪くないけれども、っていうのはいくつも見てきてますよ。なので、僕らは本質、このチームの本質を常に捕らえること、周りの空気に惑わされないことが一番だと思っています」

その空気感をつくるのはメディアであり、そのまま受けとめる世間という構図。一理ある言葉だった。

ここで言う「空気感」とは何か? 暗黙の基準や見立て、いわば一つの共通認識となる。

我々は幼少期からさまざまな経験や善悪の学びを経て「空気」を読むようになる。社会的規範を形作る上で空気を読むことは大事だ。そして、同時にさまざまな価値観をはらみ「空気感」が社会に生まれていくことになる。

1980年代後半から90年代初頭のバブル景気には、財テクブームという「空気感」があった。メディアが過熱装置となったことは言うまでもない。結果、バブルがはじけた後は株価も地価も急落し、長期の不況に陥った。

話を戻してサッカーで言えば、今夏のワールドカップ(W杯)の日本代表が思い浮かべた。アジア最終予選を圧倒的な強さで突破し、「史上最強」の呼び声が高かった。加えて昨秋には王国ブラジル代表を逆転で破り、今年3月には強豪イングランドにも競り勝った。

こちらはチームの中から「世界一を目指そう」という高い目標が出た。それも当然だろう。チームの連帯感や士気を高め、大きな成果を上げるための行動としては間違ってはいない。

ただ我々メディアは検証することなく、試合結果をもとに期待的観測を強めて「ベスト8は堅い」「あわよくば4強も」などとあおった。社会全般でW杯に関心を持ってもらうという高まる熱に「水を差す」ことは、「あってはならないこと」だった。そこは協調性を大事にする日本人的美徳感が支配していると思う。

結果は順当にブラジルに敗れ、32強止まり。過去3度到達している16強に及ばなかった。三笘薫や久保建英が負傷で不在だったとはいえ、「新しい景色」はなかなくも消えた。まさにバブルがはじけ、ハッと目が覚めた気分だった。

先日、WOWOWで解説者を務める元日本代表で02年W杯戦士の戸田和幸さんと話す機会があった。今季の欧州チャンピオンズリーグの展望を語ってもらう中で、日本人選手について触れた時だった。

「ヨーロッパでプレーする日本人選手が増えましたとか言われますけど、W杯を見て、僕も改めて思いました。世界地図で見なきゃいかんっていう。フットボール世界地図で見ないと。日本人の数が増えたって言っても、あんまり意味がない。ではアフリカはどうなったって言ったら、今回のアフリカはメチャメチャ強かった。(日本の)現状ベスト8は相当遠くなったと思いました」

今回のW杯で優勝したスペインを筆頭に強国を挙げていけば、すぐ両手の10本の指は折れてしまう。多くのクラブでは欧州育ちのアフリカ人選手たちが躍動している現状もある。日本人選手の局面的な活躍を切り取って見るのでなく、世界地図の中で俯瞰(ふかん)して見ること。つまり「空気感」で物事を捉えず、現実を正確に直視することが求められる。

何ができていて、何が足らないのか。メディアとして足もとを見つめることの重要性をあらためて考えさせられた。

空気を読むことも必要だが、それを優先させれば、物事の本質を見落としてしまう。論理や根拠、そういった物差しは常に携帯したい。

ただ、言うは易く行うは難し。空気ばかり読んで生きてきたわが身を省(かえり)みている。【佐藤隆志】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サカバカ日誌」)

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