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トランプ大統領「判定の見直しを求めた」前代未聞の介入、一方で皮肉な構図も


【写真】ベルギーに敗れ、引き揚げるアメリカのバログン(AP)

<FIFAワールドカップ2026(W杯)北中米大会:アメリカ1-4ベルギー>◇決勝トーナメント2回戦◇7月6日(日本時間7日)◇シアトルスタジアム

トランプ大統領がW杯に介入するという前代未聞、言語道断の事態があった中、裁定が変わった。

今大会3点を挙げるアメリカFWバログンの出場停止が急転、1年の執行猶予となった。つまり次戦に出られることになった。

トランプ大統領は国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長に連絡を取ったことを認めた。その上でこう言い放った。

「ファウルだとは思わなかったため、判定の見直しを求めた」「(処分が実施されたら)大きな汚点を残したと思う」。

そして「正しい決定だった」とまで言い切った。

VARが導入され、誤審が見当たらなくなった現代サッカー。むしろ誰も気づかない小さなところまで拾っている。試合を壊すことなく、そしてクオリティーを高めるべく、レフェリーがどれだけ日々研さんを重ねていることか。そのレフェリーへの侮辱であろう。

FIFAのインファンティノ会長も連絡を受けたことを認めた。その上で「FIFAの独立した司法機関、規律委員会の決定を尊重する。私たちは無関係だ」と頬かむりを決め込んだ。忖度(そんたく)があったとしか思えない。

欧州連盟(UEFA)が「一線を越えた。我々はこのような前例のない、理解不可能で、正当化できない決定に驚きを隠せない」とFIFAを公然と非難したのは当然だった。

「スポーツインテグリティー」が問われる時代。先人たちが地道に積み上げてきたルールが根幹にあるからこそ、スポーツの持つ高潔性が担保されている。その大事なところに「鶴の一声」で手を入れたならば、もう積み木崩しでしかない。

渦中のバログンはベルギー戦に先発出場し、懸命に戦った。それ自体はまったく批判されるべきものではない。それゆえに当事者が一番、心苦しかったのではなかろうか。引いてみれば、アメリカ代表が世界から白い目で見られてしまう。ただ純粋に戦い、勝負をしたまでに過ぎない。そこが残念でならない。

そしてもう一つ視点を変えれば、トランプ大統領へは皮肉となった。

出生地主義の米国には「バースライト(Birthright)」という権利がある。米国で生まれた場合、市民権が付与される。バログンがそうだ。

ニューヨークを旅行中だったナイジェリア人の母親が妊娠後期にあり、英国への飛行機に乗れず現地で出産。その後に帰国したバログンはユース年代まで英国で育ち、世代別代表にも入っていた。だが23年に米国連盟のエリートプログラムに参加したことで、米国代表を選択したという経緯がある。

「米国第一主義」を抱えるトランプ大統領は、その「バースライト」についてこれまで廃止を訴えていた。その反対派が、チームが勝つためにバースライトにすがったということだ。

結果はベルギーが勝った。裁定に左右されなかったことで、1つの事態はひとまず収まった。ただ正当な理由なく裁定を変えたという事実は重い。

W杯は汚された。【佐藤隆志】

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