
西武の中村剛也内野手(42)のウキウキした声が、気温5度ほどのベルーナドームに響く。
「走れえ!!」
「柘植、柘植ぇ!」
新人入寮の裏で、ひそかに前日7日に始動。この日8日は、2日連続でマシン打撃に取り組んだ。プロ25年目、さすがのテクニックで左中間、右中間と打ち分けていく。
炭谷銀仁朗捕手(38)と勝手に企画し、あとから球場に姿を見せた柘植世那捕手(28)と岸潤一郎外野手(30)を外野につかせる。「アメリカンノックだ~!」と打ち分け、右に左に走らせる。
その後は2人に三遊間を守らせ、痛烈な打球で抜いていく。「いや、あれは別に」と言いつつ、ベテランだからできる技術だ。
終盤は炭谷にスマホで動画撮影してもらった。「そんな古くないっすよ」と言いつつ、25年前の入団時と比べれば、練習を取り巻くデジタル環境も大きく変化した。炭谷に打席を譲ると、少しの時間ながらスマホとにらめっこ。
いよいよAIも加速し、チャットGPTと野球が接する時代に。「聞く時間あったら、その時間でバット振れる」と笑う。
使用経験は「ないないない」。ただ「何かチャットGPTに聞きたいことは?」との質問には「ないっすねー、とりあえずは」と含みを持たせたり。
プロ25年目が始まった。心境とここからのペースは「いつも通り。適当に」と通常営業の回答。ふざけているわけではない。
「そういうのって自然と上がってくるもんだし、そういう、無理に(ペースを)上げるとかはなくて、やっていくうちにどんどん上がるのかな」
膨大なテキストデータを元にしているAIでは導き出せない、人間くさい、こんな自然体の極みがおかわり流。
冷え込んだが、それでも「昨日よりまし」と精力的に動いた。
あったかい汁物を食べ終えると、炭谷は「明日は朝2時に来ますんでよろしく」と真顔でロッカーに消えた。42歳は「俺は10時。今夜の10時」と張り合った。【金子真仁】
