＜カープ番コラム＞
広島の来季コーチングスタッフが発表され、福地寿樹2軍ヘッド兼打撃・走塁コーチが1軍打撃チーフコーチに就任することが決まった。プロ入り後に俊足を生かすため左打ちに取り組み、両打ちに。さらに首位打者まで上り詰めた実績がある。その過程と経験は、ドラフトで1位指名した同じ両打ちの仙台大・平川蓮外野手（21）育成に生かされるはずだ。
両打ちには両打ちにしか分からない悩みはある。「スイッチって、両方がすごく調子がいいことがまずない。どっちかがいいときはどっちかが悪い。どっちも悪いということはあっても、どっちもいいというのがない。だから、精神的にも強くないといけない。だから、悩みは尽きない」。右でも左でも、どちらかの調子が悪ければ両打ちのメリットは失われる。周囲には好調と見えても「本人しか分からない（左右での調子の）差もある」と言うように、繊細な面も抱えている。
当然、右打ちと左打ちでは体の使い方も異なる。調子を上げるにしても維持するにしても、バットを振らないことには始まらない。「体が丈夫じゃないと持たない。右だけでなく、左でも打たないといけないということは、負担が2倍になる。練習量はほかの選手と同じ量ではなく、2倍、2倍…となる」。福地コーチ自身も広島から西武、ヤクルトとチームが変わっても、バットを振って振ってポジションをつかんできた。
両打ちは技術面に加え、精神面、そして肉体面の強さが求められる。それでも、両打ちだからこその醍醐味（だいごみ）もあると福地コーチは言う。
「だけどね、喜びも2倍あるんだよね」
平川もきっと、プロの世界で苦しい思いはする。そんなに甘い世界でないことは、福地コーチも身をもって味わってきた。ただ、その苦しさの先にある喜びを共有するために選手に寄り添っていく。新コーチとして課せられた使命を胸に、コミュニケーションを取りながら成長を後押ししていく。【前原淳】
