
涙を糧に再出発だ。阪神石井大智投手(28)が増量計画で今オフのさらなる進化を誓った。4連敗で夢破れたソフトバンクとの日本シリーズ。力の差を痛感した右腕は、冷静に結果を受け入れていた。
「悔しいという感情はそこまでなくて。力の差は1戦目に投げた時から感じていたので、いずれそういう未来になるんじゃないかと思いながらではあった。その事実を認めて。自分がもっとより良くなるために」
1勝3敗で迎えた日本シリーズ第5戦(甲子園)。2点リードの8回に登板し、逃げ切りに入った。1死一塁で迎えた1番柳田。その初球、外角直球を左翼ポール際に運ばれた。今季は日本記録となる50試合連続無失点を達成し、CS,日本シリーズも6試合連続無失点できていた。ポストシーズンを含めて23年7月以来約2年、146試合ぶりとなった被弾に試合後は涙を見せた。それでも、立ち止まっている時間はない。
「振り返っている時間はないですね。もう11月ですし。プロ野球選手はオフの期間が短く、そこで来年の準備をしなきゃいけない。今始めないと取り戻せないというか、間に合わない」
11月、12月は例年通り、筋肉を肥大させる時期に充てる予定。その上で今オフ力を入れるポイントのひとつが体重アップだ。これまでのベスト体重は81・5キロで、シーズン中は増減500グラム程度を維持。今オフは1・5キロ上げた83キロをベースにし、球速アップなどにつなげる狙いだ。ソフトバンクに力の差を見せつけられ、根本的なパワーを高める覚悟を決めた。
「速さだけではないけど、やっぱりそこ(球速)は絶対値として持っておいた方がいいのかなという部分はある。他の変化球だったり、そういうところに生きると思うので」
この秋は高知・安芸キャンプに参加せず、自身に調整を任される。「自由にやらせてもらっているからこそ責任はある。来年は今年以上に活躍できるようにと思っているので」と引き締める。シーズン無失点記録は途切れていない。さらなる進化で、来季もゼロを積み重ねる。【波部俊之介】
