
<マイナビオールスターゲーム2025:全セ-全パ>◇第2戦◇24日◇横浜
主演、今井達也-。
黒メッシュのロン毛エース、西武の今井達也投手(27)は、リリーフカーに乗って球宴の先発マウンドへ向かう。
BGMは「世界中の誰よりきっと」。作新学院(栃木)で夏の甲子園を制した仲間、DeNA入江が登場曲に使っている。友は右上腕の神経障がいで出場辞退になった。
「本来だったら出場できたんですけど、代わりになんかね。横浜スタジアムってこともあったので、セ・リーグファンの方もなんかこう、楽しんでいただければと思って」
入江への事前連絡、一切なし。「ま、(テレビで)見てれば(気付く)、って感じです」と割とざっくりだ。マウンドでもいつも以上に力感の薄いフォーム。150キロ台をびゅんびゅん投げる。
テレビ朝日の仕込みで胸元にピンマイクがある。全セの阪神佐藤輝を追い込んだ。「松坂さん、まっすぐとスライダー、どっちがいいですか?」。放送席の西武OB松坂大輔氏(44)にいきなり質問。公共の電波上でやりたい放題の末、156キロをぶち込んだ。
「パテレが見た~い!!」
クールな剛腕は今春、CMでほえ、世にキャラ変を伝え始めた。静かそうでも実は、プロ野球選手の使命を強く胸に刻んでいる。
「自分より、見に来ていただけるファンの方が楽しくないといけないと思うので、そこを第一に考えて、僕にできることを考えてやったつもりです」
エンタメは台本通りじゃ終わらない。継投する同僚の隅田が、リリーフカーに仁王立ちで乗っていた。目が合った。同じように腕を組み、そこからの25秒間、マウンドで待った。「アドリブ? そうです」。
隅田の投球練習をマウンド周りで眺める。投手コーチごっこも「アドリブ? あ、そうです」。自軍の豊田投手コーチのマネではないようだが、実に堂に入っていた。交流戦、同じ横浜でDeNAバウアーの「ソードセレブレーション」を再現し、球宴へのハードルを自分で上げていた。名優今井達也は、過去をはるかに超えていった。舞台を降り、スイッチを切り替える。7月末、再び獅子のエースとして4位から逆襲するマウンドに戻る。【金子真仁】