
<高校野球大阪大会:大阪桐蔭1-0大阪偕星学園>◇24日◇準々決勝◇くら寿司スタジアム堺
大阪桐蔭がサヨナラスクイズで薄氷を踏む1-0勝利を収めた。4強入りを決め、2年連続の甲子園に前進した。cm
0-0の9回。1死から連打と申告故意四球で1死満塁とし、途中出場の黒川虎雅内野手(2年)がスクイズを決めた。その瞬間、ナインが小躍りしながらベンチを飛び出した。苦しい試合展開を表すシーンだった。西谷浩一監督(55)は「カウントが整ったし、より確率が高かったので」と振り返った。
黒川は身長166センチとメンバーで最も小柄。体格に恵まれた選手が多い大阪桐蔭では逆に目立つ。「初球からスクイズがあると思っていた」と自分に求められた役割を理解していた。ボール、ファウル、ボールでカウント2-1となり、予想通り「スクイズ」のサインが出た。三塁走者がスタートを切った。
投球は内角低めに鋭く落ちるスライダー。見逃せば暴投かという難しい球だったが、瞬時に膝と腰を折り、強引にバットに角度をつけて、三塁寄りに転がしてみせた。「投手正面のラインを外せば、走者はかえってくれると思っていた」。執念と技術が詰まった会心のプレーだった。
忠岡ボーイズ時代は1番打者だったが「バントした記憶がありません」と打撃に自信があった。だが、全国的な名門・大阪桐蔭に入学して、すぐに現実を受け入れた。「自分は体が小さいし、先輩たちの練習を見て、ただやっているだけではダメだと。自分がここで生きる道を探さないといけない」。小技を徹底して磨く決意を固めた。
3月の練習試合で犠打のために代打で出た際、強く転がしてしまい、二塁封殺のバント失敗。小技で失敗していてはメンバー入りは難しいと、危機感がさらに増した。指導者の助言を聞き、数をこなして、自分に合うバントの形を模索し続ける日々だった。
夏の大会直前のこと。「やっている時に、パッとはまる感覚があって。これやな、と」。コツをつかみ、絶対的な自信を深めた。バットと目の距離を最も大事にしているといい「近すぎても遠すぎてもよくないですね」と解説した。
猛打、巧打だけではなく、基本プレーを当たり前にこなせるのが大阪桐蔭の強さ。渋いバイプレーヤーの活躍で、V候補が厳しい一戦を乗り越えた。