
<ヤクルト3-1広島>◇19日◇神宮
失いかけていた自信を少しだけ取り戻した。ヤクルト奥川恭伸投手(24)が“9度目の正直”で今季初勝利を手にした。7回3安打無失点。8奪三振で三塁を踏ませない好投だった。お立ち台から最高の景色を眺めた。今季9試合目での初勝利に「あらためて勝つってこんなにうれしいんだ。長かった。うれしいのと同時に、この1勝で終わりたくない」と実感を込めた。
白球に魂を込めた。7回は先頭坂倉に、フルカウントから高めのスライダーがわずかに外れた。ガックリ膝をつき苦笑い。続くモンテロは初球のフォークで狙い通り三ゴロ併殺に仕留め、表情を引き締めた。最後は末包を二直に打ち取り雄たけびを上げた。7回を投げきるのは、21年のオリックスとの日本シリーズ第1戦以来、4年ぶりだった。
開幕投手を務めたが、今季は2度の2軍再調整を経験。登板した試合で、チームが8戦全敗だったのも心にのしかかった。考えれば、考えるほど何が正解か迷った。だからこそ迷いを消すように思考をシンプルに、力強い直球を追求した。シュート回転気味の直球を調整。体の開きを抑えるようにキャッチボールではインステップも試した。上からたたくように直球を投げきれるようになって、少しずつ自信を取り戻した。
まだ1勝4敗。「なんとか勝ち越しまで、まずは持っていけるように」と後半戦の巻き返しを誓った。歓喜の中に強い決意が湧いた。【上田悠太】