
<高校野球西東京大会:府中東2-1昭和>◇19日◇4回戦◇コトブキヤスタジアム
奇跡とは起きるものではなく、起こすもの-。
今大会唯一の都立のシード校、府中東が2試合連続のサヨナラ勝ちで97年の過去最高成績に並ぶベスト16入りを果たした。
1点を追う9回1死から主将の北山快音内野手(3年)の四球からつないできた2死満塁の絶好機。打順は2番の原佳吾内野手(3年)に回った。
「チームメートと1試合でも多くやりたかった。みんながつないでくれたので、絶対にかえすという気持ちで」右打席へ向かった。相手変則右腕の初球、外角直球を「がっつり振る」と右前へはじき返した。
三塁走者の高橋楽羽外野手(3年)が本塁を踏むと、二塁走者の小野駿之助捕手(3年)は鮮やかにスラインディグして生還。一塁側ベンチへ、人さし指を掲げた後、仲間から手荒い祝福を受けた原は「過去一うれしい」と破顔した。
8回1死一、二塁では、二塁の守備で遊-二-一の併殺を狙ったが、「(球を)握れていない状態で焦って投げてしまった」と一塁への送球がそれた。相手に痛恨の先制点を許した。それでも、汚名返上の殊勲打には五江渕好正監督(66)も「ミスしたやつが取り返すのが高校野球」とうなずく。
春季東京大会の早大学院戦でも逆転の2点適時二塁打を放ち、シード権をつかんだ原。当時は9番打者だったが、「そこ(早大学院戦)から打撃が良くなって上向きになった」。春以降は上位打線を任され、チームの信頼をつかんだ。
春のミラクルに続き、夏は「ベスト16はノルマ」と指揮官が求めたハードルまでクリアした府中東ナイン。高揚感とともに挑むのは8強への壁だ。「次も勝ちにいきたい」と原。歴史や記録は塗り替えるためにある。【泉光太郎】