
<高校野球佐賀大会:鳥栖3-2鳥栖工>◇16日◇準々決勝◇さがみどりの森球場
鳥栖の呉昇勲(オ・スンフン)外野手(3年)が一世一代の好走塁を見せ、チームを佐賀4強入りに導いた。2-2で迎えた延長10回タイブレーク1死二、三塁の場面だ。三塁走者の呉が奇策に打って出る。
「腹をくくって。今日は完全に狙っていました」
打席の6番平野壮真内野手(2年)は空振り三振に倒れ、振り逃げで相手捕手は一塁へ送球。その瞬間だ。呉が勢いよくスタートを切った。「イチかバチか。これでアウトなら仕方ないと思って」。50メートル5秒7の快足を飛ばし、ホームへ頭から突っ込んだ。間一髪でセーフ。ギャンブル走塁で値千金の決勝点を奪った。
「練習ではやっていないです。とっさにです。あのケースはほんとに初めて。(鳥栖工)松延投手もいいピッチャーで、これでしか点は取れないと思った」
韓国出身の両親を持つが「生まれは日本」と佐賀県出身。中学は同校の系列で香楠中だ。父オ・サンミンさんはハンドボール元韓国代表。身体能力は父親譲りだという。主戦場は中堅も、今大会ここまで全3試合で先発も務める二刀流ぶりの活躍だ。
目標の甲子園まで、あと2つ。「ここまで来られて良かったけど、負けたら何も残らない。優勝以外、目指すところはない」と表情を引き締めた。【佐藤究】
◆呉昇勲(オ・スンフン)2007年7月6日生まれ、佐賀県出身。小学3年で野球を始め、中高一貫校の香楠中では軟式の野球部に所属。同校では1年時からベンチ入り。今大会は背番号8も、投手も兼任。両親は韓国出身。165センチ、75キロ。50メートル5秒7。右投げ右打ち。