
<楽天3-5ソフトバンク>◇13日◇楽天モバイルパーク
ソフトバンクの23年ドラフト1位、前田悠伍投手(19)がプロ初勝利を挙げた。大阪桐蔭時代の恩師、西谷浩一監督(55)がプロ1勝を祝福し、印象的な出会いを思い起こした。
大阪桐蔭は前日12日に港を26-0で破り、大阪大会で快勝発進。次戦に備えて、この日は同校グラウンドで練習をしながら、教え子の登板を気にしていた。試合後、恩師はまず「よかったです」と息をついた。
出会いは衝撃だった。「初めて見たのは、中学2年の大会でした。土砂降りの雨が降る中で、顔色一つ変えずに投げていました。普通ならマウンドやスパイクの裏についた土が気になって仕方ないところ。でも、淡々と投げていました。ナイスピッチングだなと思ったのですが、本人はもっといい投球ができると。それで好天の試合を見に行ったら、もっとすごい投球を見ることができました」と、忘れられない中学生になった。
そんな投手が、希望進路に大阪桐蔭を選んだ。「これは絶対にプロに進めるように育てなければいけないなと思った投手でした」と、期待感、緊張感、責任感を持って見守ってきた。大阪桐蔭時代から「センスの塊」と評されることが多かった前田悠。西谷監督は「どの球種でもストライクが取れたし、けん制が抜群にうまい。投手として、持っていてほしいけれど、なかなか教えられないものをすでに身につけていました」という資質にセンスを感じていた。2年春はセンバツを制し、3年春は4強。高校最後の夏は大阪大会決勝で敗れ甲子園に届かなかったが、エースとして高校日本代表をU18W杯優勝にけん引。ドラフト1位評価を不動のものにし、ソフトバンクが運命の球団になった。
昨年10月1日のオリックス戦で先発で1軍デビューも、3回6失点で降板。「全く通用しなかったと話していました。オフに帰ってきたときも、次に1軍に上げていただいたら2度と抹消されないくらいの力を身につけなければ、と覚悟を決めていました。淡々としてはいますが、とんでもない負けず嫌い。昨年の1軍登板の経験が、今日に生きたのではと思います」。ほろ苦い経験が、記念の1勝となって実を結んだ。【堀まどか】