
<高校野球宮城大会:仙台商5-2日本ウェルネス宮城>◇13日◇1回戦◇楽天イーグルス利府球場
昨夏から続く3兄弟の物語。日本ウェルネス宮城の新沼櫂里(かいり)投手(3年)は、兄櫂我(とうが、現東日本国際大)と同じ背番号「1」をつけ、最後の夏を戦った。
昨秋までは捕手。昨夏は、小学校以来コンビを組んで8年目の「兄弟バッテリー」として出場していた。「まさか今年は自分が『1』をつけて、投げるとは思いませんでした」と想像もしていなかった景色だった。
投手力が課題の同校。「チームのために」と自ら投手転向を志願。「気持ちが制球力につながる」。昨夏の絶対的エース、櫂我からアドバイスを受けた。
今年からは2学年下の弟櫂史(かいじ、1年)が入学。この試合でも、兄弟の絆が光った。櫂里は2回から肩の痛みに襲われるアクシデントに見舞われ、3回途中に降板。代わって入った櫂史が遊撃の守備についた。同回1死満塁では、遊撃への打球を丁寧に捕球。自ら二塁ベースを踏み、一塁に送球した。併殺打で切り抜け、櫂里が招いたピンチを救った。
3カ月間はあっという間だった。櫂里は「これを踏み台にして、もっと上に行ってくれれば、この負けも意味があると思います」と後輩らに託した。涙が止まらなかった櫂史は「本当に楽しかったです。でも、もっとお兄ちゃんと長く野球がしたかった…」と口にした。「2人(櫂我、櫂里)の思いも背負って、甲子園に出場します」。約束を果たし、頂点の景色を兄に送る。【木村有優】