
<東北地区注目選手紹介:連載1>
今年も熱い夏が始まる。第107回全国高校野球選手権大会(8月5日開幕、甲子園)出場を懸け、来週から東北各地で熱戦が繰り広げられる。東北6県版では各県の注目校や選手を、全5回に分けて紹介する。第1回は今春東北王者の仙台育英(宮城)と、センバツ8強の聖光学院(福島)。勝利のカギをにぎる両エースを紹介する。
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三度目の正直の舞台へ。聖光学院の大嶋哲平投手(3年)が、4年連続の甲子園へと導く。今春東北大会では2試合に登板し、防御率3・46。仙台育英との準決勝(0-3)は完投するも、9安打3失点(自責2)。「体力面、技術面、精神面、どれをとっても、まだまだ未熟だったので、仕上げて夏に臨みたいです」と振り返った。
大舞台では2度の大敗を経験。昨年11月の明治神宮大会では東洋大姫路(兵庫)に0-10の5回コールド負け。先発した大嶋は2回6失点(自責3)。「あの敗戦は一瞬たりとも忘れたことはありませんでした」。球場のスコアボードを撮影し、携帯の待ち受け画面に設定した。
8強入りした今春センバツでは、3試合で329球を熱投。常葉大菊川(静岡)との初戦では、10回2失点(自責0)。4-3で延長タイブレークの接戦を制し、「120点」の甲子園デビューを飾った。2回戦の早実(東京)には、4失点(自責2)で完投。12年ぶりの8強に導いた。
翌日の浦和実(埼玉)でも、4-4の7回途中から登板。中2日で267球を投じたとは思えない力投で、同点のまま延長タイブレークに持ち込んだ。だが、ついに限界を迎えた。犠打を挟み6安打。8失点(自責5)で降板した。「夏にまた帰ってきて、『あの負けがあったから』と言いたいです」と夏のリベンジを誓い、甲子園を後にした。
「もう自分のせいで負けて、仲間を悲しませたくない」。エースは並々ならぬ覚悟を胸に刻む。掲げるのは「チームが負けない投球」だ。「満点の投球ではなく、試合が終わった時に1点でも失点を少ない投球をしたいです」と話した。
福島大会は10日に開幕する。粘り強く、泥くさく、ひたむきな「聖光野球」で駆け上がる。【木村有優】
◆大嶋哲平(おおしま・てっぺい)2007年(平19)9月4日生まれ、千葉県神崎町出身。神崎中時代は陸上部と江戸崎ボーイズに所属。170センチ、68キロ。左投げ左打ち。