
<ヤクルト0-6阪神>◇29日◇神宮
阪神前川右京外野手(22)が、31試合ぶりのスタメンで気迫のヘッドスライディングを決めた。1点リードの5回無死一塁で先発アビラから中前打を放ち、一、三塁に好機を拡大。7番坂本の適時二塁打で三塁に進み、見せ場がやってきた、1死二、三塁から9番伊藤将の投手正面へのスクイズでホームへダイブ。完全な阪神ペースに持ち込む3点目をもぎ取った。気持ちのこもった激走に「いや、まあ…それは普通なんで」と照れ笑い。捕手古賀の足に顔面が接触したようにも見えたが「大丈夫です」と頼もしげに言った。
この日、佐藤輝が右翼から三塁へ、森下が左翼から右翼に回り、5月21日巨人戦(甲子園)以来の先発左翼を託された。「1度逃したチャンスだったので、逃したらダメだなと思って(試合に)入りました」。開幕から不動のはずだった左翼レギュラーの座は、5月中旬に明け渡した。打撃不振で同月22日に出場選手登録を抹消され、6月17日に1軍復帰したばかり。ようやく巡ってきた、開幕戦と同じ「6番左翼」の出番で、再びその座を奪われるわけにはいかなかった。
スクイズでの生還後は、心配した藤川監督からねぎらわれるシーンもあった。闘志あふれるプレーで完勝に貢献したが、本人は満足感に浸らなかった。「1本出たのはよかったけど、やっぱり目立つような活躍をしないといけない。そういった面では足りなかった」。1球1球、貪欲に。帰ってきたホープの姿勢が虎の活力となる。【佐井陽介】